深海の海底から最高で400度にも なる熱い水が噴き出しているところがある。ここは「熱水噴出孔」といい、「地球最初の生命(生物)」が誕生 したところとも考えられている。最初の生命は、深海の底で、どのように生まれたのだろうか。映画『深海のサバイバル!』の中にも登場する「熱水噴出孔」。小中学生向けニュース月刊誌「ジュニアエラ」9月号では、その秘密に迫った。
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地球最初の生命(=生物)はどのようにして生まれたのか。宇宙からやってきたという説もあるが、大多数の研究者は、約40億年前に深海の熱水噴出孔付近で生まれたと考えている。
最初の生物も含め、初期の生物は、体が一つの細胞の、小さな単細胞生物だった。10億年前ごろになると、体がたくさんの細胞からできた多細胞生物が出現し、6億年前ごろには海の中に動物が姿を現した。その中のあるグループが魚類、両生類、爬虫類、哺乳類へと進化して、現在の私たちがいる。
「今、地球上にいるすべての生物の共通の祖先は、約35億年前にいた通称「ルカ(LUCA)」と呼ばれる単細胞生物だと考えられています」。こう語るのは映画『深海のサバイバル』を監修したJAMSTEC(海洋研究開発機構)の研究者、高井研さんだ。
「化石がないので確かな姿はわかりませんが、ルカは現在の生物と同じように細胞の中にDNAがあり、現在の生物と同じ細胞のしくみを使って生きていました。ただし、ルカが地球最初の生物というわけではありません。ルカよりさらに5億年さかのぼった約40億年前に、最初の生命が誕生したと考えられているのです。最初の生命が私たちと同じようにDNAを持っていたかどうかはわかりません。私は、もっと簡単なつくりだったと考えています」
●生命は何度も誕生したが、生き延びたのは一つだけ
地球最初の生命が、深海の熱水噴出孔付近で生まれたと考えられるようになったきっかけは、40年ほど前から深海の熱水中にすむ微生物が次々に見つかったことだ。遺伝子を調べていくと、これらの微生物は非常に古い時代にいたことがわかり、体のつくりなどから、最初の生物に近いと考えられるようになってきた。
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