■決してあきらめない心

 幼少期の羽生を指導した山田真実コーチ(47)は「今は回転不足が厳しく取られてしまう時代。8分の1と言っても、そこを縮めるのにはとても時間と労力がかかる。さらにけがをせず、練習に耐えられる体を作るのも本当に大変なことでしょう」と思いやる。

 それでも、決して諦めない心中を山田さんはこう察する。

「誰が何を言っても、彼はやると決めたらやる。すでに色々なことができるからこそ、新しいことをやりたいと思うのでしょう。『挑戦』に価値を求めている選手ですから」

 マスカレイドの演技前、羽生の肉声メッセージが会場に流れた。

「今シーズンは、自分の最大の夢に向かって、全力で努力していきます」

 競技人生をかけた目標へ。羽生は挑み続ける。(朝日新聞スポーツ部・岩佐友)

AERA 2021年8月2日号