バイデン氏の「尖閣に安保適用」を喜ぶ政府とマスコミの滑稽さ 米国の本音は「前面に出たくない」 (2/2) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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バイデン氏の「尖閣に安保適用」を喜ぶ政府とマスコミの滑稽さ 米国の本音は「前面に出たくない」

田岡俊次AERA
超大国のトップとして対峙することになるバイデン氏と中国の習近平国家主席。反中の国内世論を受けたバイデン氏が中国敵視の姿勢を強めれば、対立がドロ沼化しかねない(gettyimages)

超大国のトップとして対峙することになるバイデン氏と中国の習近平国家主席。反中の国内世論を受けたバイデン氏が中国敵視の姿勢を強めれば、対立がドロ沼化しかねない(gettyimages)

 だがもし大統領や議員達が「日本の無人島のために中国と戦争をするのは馬鹿げている」と思えば、本来の憲法の規定に従い「議会にはかったが承認が得られなかった」として参戦しなくても安保条約に違反しないことになる。

 米国が島嶼を巡る日中の戦争で前面に出たくない姿勢を端的に示しているのは、「日米防衛協力のための指針」(ガイドラインズ)だ。2015年に合意された指針の「日本に対する武力攻撃が発生した場合」の作戦構想には「陸上攻撃に対処するための作戦」が述べられている。

「自衛隊は島嶼に対するものを含む陸上攻撃を阻止し排除するための作戦を主体的に実施する(英文では『一義的責任を負う』)。必要が生じた場合自衛隊は島嶼を奪回するための作戦を実施する」など、地上戦で重要な役割のほぼすべてを自衛隊が担うことを決めている一方「米軍は自衛隊の作戦を支援し及び補完するための作戦を実施する」と定め裏方に回ることを明示している。

 第2次世界大戦の結果、日本の領土は戦前の55%に縮小し、支配下だった満州を含むと25%になった。西ドイツの領土も戦前の42%に減った。だが日独両国はその後、戦勝国のイギリスやフランスをしのぐ経済大国となり、領土の面積が国力を決める重要な要素ではなくなったことを示した。それでも、やはりテリトリー争いは生物の本能だけに、領土問題では当事国の民衆は国の利害と不釣り合いなほど興奮しがちだ。他国がそれを冷笑し、傍観することは少なくない。

 米国国務省の高官が在米日本人の会合で「米国はカナダとの境界付近にある無人島やカリブ海、南太平洋の島々を巡り、17件も他国との意見の相違があるが衝突はしていない」とたしなめる発言をしたこともある。日本が隣国と小島の帰属を巡って争い、武力紛争になった際、米国が戦争の危険や経済的損失を覚悟して参戦するか否かは疑問と考えざるをえない。(軍事ジャーナリスト・田岡俊次)

AERA 2020年11月30日号より抜粋


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