入退院のサポートを頼める人がいない場合は、家事代行サービスを利用する手もある。例えばニチイ学館が提供する家事代行サービス、ニチイライフの「入退院安心サービス」は、スタッフが入院準備品の用意や洗濯や買い物、留守宅の掃除、郵便物の回収などを行ってくれる。

 同社の執行役員本部長の福田信也さんによると、08年に始まったこの事業は年々伸びていて、当初は60歳以上の利用がほとんどだったが、現在は利用者の3割が40~50代の現役世代で、家族がいる人といない人の割合は半々だという。

「家族がいる人でも、入院で迷惑をかけているという申し訳ない思いがあり、いろいろとお願いしにくいという声がある。手芸用品など趣味の道具や読みたい本を買ってきてほしいと頼まれたスタッフが、『入院中も自分らしい生活を送れる』と感謝されることも少なくありません」

 料金はエリアによって3段階あり、1時間のスポット利用で都内だと税込みで6490円。地方は5500円だ。

 ペットのいる人が頼れるサービスもある。NPO法人ペッツ・フォー・ライフ・ジャパンのペット飼育保険は、年間1万2千円を払い、飼い主が事故や入院などで世話できなくなったときに一時的に預かってくれる。

「家族がいても、入院付き添いなどでペットのお世話ができなくなるケースもあります。飼い主が安心して治療に専念でき、その後また一緒に暮らせるために利用していただいています」(事務局の石本理佐子さん)

 また、病気やケガが悪化して判断能力が衰えるような場合には、成年後見制度が利用できる。保険金の受け取りや財産の相続など、複雑な手続きも本人に代わって行ってくれるので、もしもの時は役に立つ。

 ここに紹介した制度やサービスは、普段、健康なときには必要ないと思うものも多い。だが、健康なうちに調べ、申し込みの準備をしておくことが、いざというときの安心につながるのだ。(編集部・深澤友紀)

AERA 2019年11月18日号

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