「4.61度低くなると、警戒度合が1ランク分下がることになります」

 日本スポーツ協会の「熱中症予防のための運動指針」では、暑さ指数21~25度を「注意」、25~28度を「警戒」、28~31度を「厳重警戒」、31度以上を「運動は原則中止」としている。昨年8月3日の東京のコースを例に取ると、5~8時半までが「警戒」、8時半~10時は「厳重警戒」。札幌開催になると、随分改善されることになる。

 日本医師会も昨年10月、松本教授のデータを基にマラソン開始時刻を7時から5時半に前倒しすることなどを森喜朗大会組織委員会会長に提言。今年4月には組織委員会からマラソンを6時スタートとすることが発表されたが、松本教授は「札幌であればマラソンのスタート時刻を7時に戻しても、ほぼ問題ないと思います」と言う。

 松本教授によると、熱中症患者が同時に多数出ることで東京の救急医療体制が破綻する恐れがあるという。

「選手が何人か倒れ、観客が30人くらい同時に倒れて救急車を呼ぶと、東京の救急体制がパニックを起こします。そうすると例えば自宅で心筋梗塞の発作を起こし救急車を呼んだ患者さんのところに救急車が来ず、そのために亡くなるといったことが起こる可能性があります」

 マラソンは通行止めなどで東京都内を分断するため、救急車が動けないなど特に救急医療体制への負担が大きい。気候も冷涼で道路も広く、都市機能もある札幌の方がマラソン開催に適していると言う。

「世界一を競い合う大会を、死者が出かねないような暑さの中でやるのはよくないのではないでしょうか。やはり選手たちにとっても少しでもよい環境でベストのパフォーマンスを出せた方がよい。IOCの決定は唐突と言われていますが、人命を考えると妥当な選択だと思います」

(編集部・小柳暁子)

AERA 2019年11月4日号より抜粋

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