「児童労働」は本来あってはならないが、非正規工場で働く子どもたちは劣悪な環境に耐えながら、職人として誇りを持って仕事をこなしている。工場で働く大人たちの多くもビジョイ君らと同様、地方から来ており、子どもたちを厳しく指導しながらも、温かく迎え入れている。

 こうした社会背景を受け、NPO法人国境なき子どもたちは、非正規企業の雇用主に職場環境を改善するよう働きかけている。工場の電気配線や空調の整備、外光の採り入れ、適切な賃金体系や労働時間──。児童労働を頭から否定するのではなく、生活のために仕事をせざるを得ない子どもたちが少しでも良い環境で働けるよう支える活動だ。

 2013年、ダッカ郊外の商業ビルが倒壊し、1千人以上が犠牲になった事故も、人災だとされている。8階建てのビルには、五つの縫製工場が入居。違法に建て増しされ、強度に問題があったという。

 一方、同国には150万人のストリートチルドレンがいると言われている。とりわけダッカでは年々増加しているといい、多くが地方から出稼ぎに来た子どもたちだ。工場で働く子どもたちとは背景が異なり、親が亡くなったり、虐待を受けたりして家に居場所を失い、都市部に出てくるケースが少なくない。

 国境なき子どもたちは、こうした子どもたちを受け入れるドロップインセンターも運営する。センター長のタリク・アランさんによると、親や親戚が保証人になれないストリートチルドレンは、オーナーによほどの理解がない限り、非正規企業でも雇ってもらうことは難しい。拾い集めたペットボトルに水道水を入れて売ったり、物乞いをしたりして、その日暮らしをするしかないのだという。タリクさんは言う。

「センターでは食事などを提供し、子どもたちの成長を支えてきました。これからは、彼らの自立を支えるような支援も視野に入れて考えていきたい」

(フォトグラファー・清水匡)

AERA 2019年8月12・19日合併増大号