中国では14億人の金需要を満たすため、大手銀行が貴金属部を 創設して10万(!)以上の支店で金を販売している(写真提供/豊島逸夫事務所)
中国では14億人の金需要を満たすため、大手銀行が貴金属部を 創設して10万(!)以上の支店で金を販売している(写真提供/豊島逸夫事務所)
黒いアラブ民族衣装の下は、ゴールドジュエリーだらけ。イスラムの戒律で肌を晒せないが、金大好き人間なのだ(写真提供/豊島逸夫事務所)
黒いアラブ民族衣装の下は、ゴールドジュエリーだらけ。イスラムの戒律で肌を晒せないが、金大好き人間なのだ(写真提供/豊島逸夫事務所)

 金の国内価格は5000円台の壁に阻まれ、ここ4年は横ばいで推移してきたが、ついに6月、大台の5000円を超えた。そこからは弾みがつき、2019年7月現在は5300円台(田中貴金属工業の税込み小売金額)まで伸びている。この先、さらに上がるのか? その理由は? 貴金属トレーダー、経済評論家の豊島逸夫さんに聞いた。

【写真】黒いアラブ民族衣装の下は、ゴールドジュエリーだらけ

■リーマンショック以降は上昇一辺倒
 ここ10年の金の海外・国内の価格を振り返って行こう。2008年10月に起きたリーマンショックにより金の海外価格は900ドル台から692.5ドルまで急落したが、その翌年以降は上昇一辺倒だ。

 2009年に入ってからの金価格は2倍以上の急上昇に転じて、2011年9月に1トロイオンス=1896.5ドルの最高値をつけた。2016年からの3年間は1200~1300ドルでの横ばいに推移している。

 一方の国内金価格は、リーマンショック後、海外での金急騰とともに、2009年10月に1グラム=3000円を突破。あっという間に2011年7月には4000円台に到達した。直近の約4年強は、4100円台から4800円台で推移してきた。

■2019年以降は強気
 豊島さんは毎年、経済紙などでその年の金価格の動向を予想している。2018年は弱気だったが、2019年以降は強気に転じた。

「昨年は米国経済が絶好調で、中央銀行のFRB(連邦準備制度理事会)が景気の過熱を抑えるため、1年で4回も政策金利の引き上げ、すなわち利上げを行いました。ドル建てで取引されている金は、米ドルの金利が上がると、逆に利息を生まない点が敬遠されて、価格が低迷しがちです。

 しかし2019年に入り、米国ではすでに利上げ打ち止めが決定事項に。トランプ大統領が仕掛けた米中貿易戦争次第では、利下げもありうる状況になりました。利下げとなると、米ドルを保有することでもらえる金利収入が減るので、逆に金の人気が相対的に高くなります。

 さらに米中貿易戦争やイランとの軍事的緊張など、世界経済はトランプ大統領がまき散らすリスクによって先行きが極めて不透明。そんな非常事態にあって価格が上昇しやすいのが金の強みです。今年から2020年にかけて、金の価格が上昇に向かう可能性は高いと考えます」(同)

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安住拓哉

安住拓哉

出版社勤務を経て2021年に独立。経済関連記事全般が得意。取材・執筆歴20年以上。雑誌の取材記事の他、単行本のライティングも数多く手掛ける。

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海外の旺盛な需要