他人同士で目標を立て合うという不思議な ワークショップ「タニモク」が、密かに人気だ。キャリアに悩むビジネスパーソンがハマる理由はどこにあるのか。
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平日の夜6時半。都内のとあるオフィス街の一室に20代から40代と思しき男女が続々と集まってきた。その数、ざっと100人。全員初対面で、若干ぎこちない雰囲気が漂う。4人1組でテーブルに着席すると、会場に大きな声が響き渡る。
「それでは皆さん、ご自分のいまの状況をまず絵に起こしてください。下手でも全然構いませんから、文字ではなく絵でお願いします」
いきなり「絵を描いて」という指示に目を丸くする人、苦渋の表情で天を仰ぐ人──。謎のお絵かきから始まったこのイベントは、人材サービスのパーソルキャリアが開発したワークショップ「タニモク」だ。
同社が運営するメディア「“未来を変える”プロジェクト」編集長の三石原士(みついしもとし)さんが中心になって考案したもので、この日のファシリテーターも三石さんだ。
ワークショップの趣旨は「他人に目標を立ててもらう」こと。だから、タニモク。だが、目標なんて立てたい人が勝手に立てれば良さそうなもの。なのに、なぜわざわざ赤の他人が集まって「目標の立て合い」なんてことをやっているのか。
「参加者の多くはキャリアに悩む20代後半からのビジネスパーソンです。働き方の選択肢は増えていますが、その分、皆さん不安なんです」
と三石さん。悩めるビジネスパーソンが、新たな挑戦をするには「いい目標設定」が必要だが、自分で目標を立てることには限界があるという。
「人は自分に関してはどうしても慎重になりがちです。目標が実現しないというリスクを無意識に避けようとしますから。しかも自分の頭だけだと、思考の範囲も限られる」(三石さん)
ところが、人はいざ他人のこととなると、リスクを考える必要がないので、より冒険的な気持ちになれるのだそう。自身による目標設定の「限界」を超えるために、他人の頭脳と無責任さを利用しよう──。タニモクはそんな発想から生まれた。