「オウムアムア(’Oumuamua)」を知っているかな? ハワイ語で「遠くから来た使者」という意味の名をもつ天体だ。アメリカ・ハワイ大学の天文学者が2017年10月に見つけた天体で、最初は彗星(※1)と思われたが、のちに太陽系の外から飛来した天体であることがわかった。それほど遠方から来た天体の観測に成功したのは、これが初めて。その正体とは? 毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された記事を紹介する。

ボイジャーに積まれたディスク。金メッキされた銅製(写真提供:NASA/JPL)
ボイジャーに積まれたディスク。金メッキされた銅製(写真提供:NASA/JPL)
ボイジャー2号の想像図(写真提供:NASA/JPL)
ボイジャー2号の想像図(写真提供:NASA/JPL)

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 オウムアムアは全長400メートルほどで、細長い葉巻のような形をしている。彗星をはるかにしのぐ猛スピードで、左下の図のように太陽系の斜め上から太陽に引かれて近づき、加速しながらまわりこむように急カーブして太陽から離れていった。秒速25キロメートル以上の猛スピードで、七夕の織姫星のあること座の方向からやってきて太陽に近づき、秒速80キロメートル以上まで加速したあと、現在(2019年1月)は秒速約35キロメートルでペガスス座の方向へ向かっているという。

 太陽系は、天の川銀河(※2)という星の大集団の中にある。ここには太陽のような恒星が1千億~2千億個もあり、それぞれの星と星はものすごく離れている。たとえば、太陽からいちばん近い星でさえ4.2光年(※3)の彼方にある。人類がつくった最も高速の惑星探査機ボイジャー1号(秒速17キロメートル)で飛んだとしても7~8万年かかる距離だ。オウムアムアは星と星の間の何もない空間を、少なくとも数百万年という長旅をして太陽系にやってきたと考えられている。

■加速に太陽エネルギーを使った?

 オウムアムアの正体は何なのだろう? 観測技術が発達した現代でも、遠くからわずか400メートルの小天体を観測するのは難しい。太陽に近づくずっと前に見つけていれば、時間をかけて観測できたが、気づくのが遅かったので遠ざかるのを後追いするような形での観測となった。

 観測データを世界の天文学者が調べているが、アメリカのハーバード・スミソニアン天体物理学センターの天文学者エイブラハム・ローブ教授は、宇宙人がつくった探査機ではないかという説を18年10月に発表。オウムアムアには太陽の重力の影響やガスの噴出では説明できない不自然な加速がみられ、その加速のために太陽エネルギーを使っていたと考えられるという。10年に日本が打ち上げた宇宙ヨット「イカロス」は、宇宙空間で広げた帆に太陽エネルギーを受けて飛ぶことに成功している。これと同じようなしくみが、オウムアムアにも備わっているのではないかというのだ。

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上浪春海
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