死んだふりをして敵から逃れ、生き延びる動物がいます。こういう動物は、いつ、どんなきっかけで、死んだふりから目覚めるのでしょうか? アリモドキゾウムシという昆虫からわかった、興味深い研究結果を紹介します。小中学生向けニュース雑誌「ジュニアエラ2024年12月号」(朝日新聞出版)から紹介します。

MENU 死んだふりをしたままだとメスとの交尾の機会を逃す メスの匂いがあると目覚めるまでの時間が短くなる! 捕食者から逃れることより子どもを残すことを優先?

死んだふりをしたままだとメスとの交尾の機会を逃す

 自分を食べようとする天敵に出会ったときなどに、「擬死」と呼ばれる死んだふりをする動物がいる。哺乳類のオポッサム、両生類のカエルなどが知られているが、昆虫の仲間にも擬死をするものがいる。

死んだふり(擬死)をするオポッサム

 アリモドキゾウムシもその一種だ。体長6~7㎜ほどの昆虫で、ノアサガオやサツマイモなどヒルガオ科の植物に寄生して、サツマイモの害虫として世界的に恐れられている。ハチ、アリ、ネズミ、ヤモリ、徘徊性のクモなどの天敵が食べようと近づいてくると、死んだふりをしてそのまま地面に落ちる。こうして敵の視界から逃れ、生き延びようとする。
 アリモドキゾウムシは擬死することで寿命を伸ばすが、半面、擬死によって失われるものもある。それは、交尾をして自分の子孫を残す機会だ。死んだふりをして活動を停止していると、そのぶん、相手を探して交尾をする機会が少なくなる。

 とくにオスの場合、この問題は切実だ。ライバルのオスはたくさんいて、交尾の機会は多くない。危険が去ったらなるべく早く擬死から目覚め、交尾の相手を探さなければならない。

目覚めているときのアリモドキゾウムシのオス。メスの性フェロモンを感知する触角を立てている

メスの匂いがあると目覚めるまでの時間が短くなる!

 では、アリモドキゾウムシのオスはどのような刺激によって擬死から早く目覚めるのだろうか。琉球大学農学部の日室千尋さんは、メスが近づくことがきっかけになるのではないかと考え、確かめる実験を行った。

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上浪春海
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