ムーア監督は、銃規制を求めて大規模集会を組織した高校生も取材。「華氏119」は12カ国で上映、日本国内では80館で公開予定 (c)2018 Midwestern Film LLC 2018
ムーア監督は、銃規制を求めて大規模集会を組織した高校生も取材。「華氏119」は12カ国で上映、日本国内では80館で公開予定 (c)2018 Midwestern Film LLC 2018

 11月2日に日本で上映が始まるドキュメンタリー映画「華氏119」。トランプ王国化する米国の深刻な現状と未来に警鐘を鳴らすムーア砲が火を噴く。

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 延期からわずか9日間、あっという間の白判定となった。

 大学教授の女性(51)が36年前に性的暴行を受けたと訴えたブレット・カバノー氏(53)が連邦最高裁判事になる人事を、米議会上院は10月6日承認した。告発女性が証言した9月27日の公聴会を受け、連邦捜査局(FBI)の捜査終了まで承認を延期するというのが上院の決定のはずだった。他にも数人から同様の告発を受けるカバノー氏が、銃規制や人工中絶などの社会問題で国の最終的な司法判断を下す終身制の最高裁判事の一人になることが決まった。

 自らが最高裁判事に任命しただけに、トランプ大統領は早速、「カバノー氏は長年にわたり卓越した最高裁判事となる」と話した。自身や周囲に関係する疑惑は全て「偽り」「陰謀」と一蹴する大統領の強引な決断がまたしてもグレーのベールに包まれたまま認められた。

 何かおかしい。米国は壊れてしまったのか。そんな危機感が刻まれたドキュメンタリー映画「華氏119」が11月2日、日本で公開される。米国では9月21日に上映が始まっており、11月6日の中間選挙を控えたタイミングでの全米公開が、マイケル・ムーア監督(64)の明確な意志を象徴している。

「この映画が公開されれば、トランプ王国は必ず崩壊する」

 そう話すムーア監督は、米国の深刻な銃社会を描いた問題作「ボウリング・フォー・コロンバイン」(2002年)でアカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞を受賞した社会派ドキュメンタリー監督だ。ブッシュ政権を痛烈に批判した「華氏911」など舌鋒と突撃取材で知られる。

 1998年、不動産王だったトランプ氏がムーア監督とトーク番組で共演したことがある。工場閉鎖を決めた大手自動車会社の方針を批判する監督のデビュー作を見たというトランプ氏は「面白かった」と評価した上で、冗談交じりにこう付け加えた。

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