米ハワイ・カウアイ島の「イージス・アショア」実験施設。ルーマニアやポーランドにも設置するが、費用は全額米国が負担している (c)朝日新聞社
米ハワイ・カウアイ島の「イージス・アショア」実験施設。ルーマニアやポーランドにも設置するが、費用は全額米国が負担している (c)朝日新聞社
イージス・アショアの配備計画(AERA 2018年10月1日号より)
イージス・アショアの配備計画(AERA 2018年10月1日号より)

 弾道ミサイル迎撃ミサイルを陸上に配備する、イージス・アショア(陸上イージス)。防衛省は来年度予算の概算要求に「陸上イージス」初年度経費2352億円を計上した。秋田市の陸上自衛隊新屋(あらや)演習場と山口県萩市の同むつみ演習場に配備する計画だ。将来7千億円にも達しそうだが日本防衛には不必要。ハワイ、グアム防衛に有効だ。

【図で見る】イージス・アショアの配備計画

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 北朝鮮の弾道ミサイルは主としてその北部山岳地帯のトンネルに隠されていると見られ、もし首都圏に向けて発射されれば能登半島上空を通る。近畿地方を狙うなら隠岐諸島付近を経由する。弾道ミサイル迎撃には真正面から迎撃ミサイルを発射するのが理想的だ。角度が変わらず命中率が高い。目標が時速1万キロないし2万キロの高速で接近してくれるから、迎撃ミサイルは左右方向へのロケット燃料の消費が少なく、その分高い高度で迎撃できる。日本防衛に陸上イージスを配備するなら能登と隠岐に置くはずだ。

 北朝鮮北部からハワイに向かうミサイルはおおむね秋田の上空を通過し、グアムに向かうものは山口の上空を通る。弾道ミサイルが加速を終え、惰力で放物線を描いて上昇中のところを、射高1千キロ以上の迎撃ミサイルは正面から狙える。米ミサイル防衛局は新型のイージス用ミサイルは大陸間弾道弾(ICBM)に対しても有効、と公表している。

 防衛省の担当幹部に秋田、山口を選んだ理由をただしても、「日本全域を守れるから」としか答えない。射程が2500キロもある迎撃ミサイルはどこに置いても日本全域が防衛圏内に入るし、イージス艦でも十分な弾さえあればやれる。防衛省は陸上イージス導入につき「誠心誠意丁寧に説明する」と標榜するが「そこがハワイ、グアムへの軌道の下だから」と答えるわけにはいかないのだろう。

 秋田市の新屋演習場は中心部から西へ3キロ、海岸に近いが、秋田商業高校と背中合わせで、北と東は住宅地や公共施設がならぶ。迎撃ミサイルは一般的には西の海上方向に発射されるはずだが、1発目が当たらないと2発目を発射する。2発目を東の方向の「未来位置」に発射するとブースター(第1段ロケット)が陸地に落下する可能性はある。

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