「フランス女は太らない」は本当か?  九つの「神話」に迫る一冊 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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「フランス女は太らない」は本当か?  九つの「神話」に迫る一冊

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矢内裕子AERA#読書
長坂道子(ながさか・みちこ)/1961年、愛知県生まれ。女性ファッション誌の編集を経てパリへ移住し、フリーのエッセイスト、ジャーナリストとして活躍。現在はチューリヒ在住(撮影/写真部・大野洋介)

長坂道子(ながさか・みちこ)/1961年、愛知県生まれ。女性ファッション誌の編集を経てパリへ移住し、フリーのエッセイスト、ジャーナリストとして活躍。現在はチューリヒ在住(撮影/写真部・大野洋介)

『50才からが“いよいよ”モテるらしい 神話「フランス女」』は、フランス女性をめぐる数々の神話の真実を、女性たちの生きた言葉や行動から考察した大人のためのエッセー集だ。今回は著者の長坂道子さんに、同著に込めた思いを聞く。

*  *  *
「人はフランス女に生まれるのではない。フランス女になるのである」とは、有名なボーヴォワールの一文をもじった、著者の長坂道子さんの言葉(本書のそでに載っている)。

 本書は「フランス女は太らない」「フランス女は自立している」「生涯恋愛体質である」など九つの「神話」をめぐって、自身の女友だちや社会的な出来事を例に挙げながら考察した、スリリングな一冊だ。

「5年間勤めた出版社を辞めて、20代でパリに行きました。恥ずかしながらパリという街に恋をしてしまったんです。暮らし始めてみると街で出会うフランス女性たちが、それはもう魅力的なんですよ。半ば妄想も含めて、20年前に『フランス女』という本を書いたくらいです。今回、あらためてフランス女性について書くことになって、フランスの女友だちと自分の20年分の変化について書けたら面白いのではないか、と思いました」

 長坂さんが訪ねた女性たちの人生は順風満帆とは限らない。だが思うようにならない現実を抱えながらも、なお自分らしいスタイルで生きようとしている姿は魅力的だ。

「日本では目立つことを良しとしませんが、フランス人は子どもの頃から、いろいろな場面で個性が育つように鍛錬されています。自分も意見を言うし、自分と違う立場の異議申し立ても認める。教員も交通機関もストライキをするし、不便だと思っても、わりと皆、ジッと我慢している(笑)。誰かが声をあげることで、社会がより良くなるという考えが根づいているんです」

 長坂さんは結婚を機にパリを離れ、米ペンシルベニア、英ロンドン、スイス・ジュネーブと移り住み、現在は同国のチューリヒに暮らしている。

 昨年は、一般市民が自分の家に難民を受け入れているドイツを取材した『難民と生きる』を著した。

「自分の変化について言えば、この20年で視野が世界へと広がりました。世界の中のフランスという相対的な視点を持てるようになった。ではフランス女の魅力がなくなったかと言えば、そんなことはありません。自分自身を生きることをあきらめない彼女たちは、現実に傷ついたり、あがいていても素敵です」

 さて、あえて書くけれど、本書のタイトルは本文の内容をミスリードしそうだ。「モテる」という他人からの視線に反発や窮屈さを覚える人こそ、この本の読者としてふさわしい──と、付け加えておこう。(ライター・矢内裕子)

■書店員さんオススメの一冊

『亜由未が教えてくれたこと “障害を生きる”妹と家族の8800日』(坂川裕野著)は、重い障害をもつ自らの妹にカメラを向けて番組を作ったディレクターの日々をリアルにまとめた一冊だ。東京堂書店の竹田学さんは、同著の魅力を次のように寄せる。

 2016年7月26日に起きた相模原障害者殺傷事件。「障害者は不幸を作ることしかできません」という植松聖被告の言葉に怒りを覚えたNHKディレクターである著者は、肢体不自由で知的障害のある妹・亜由未の撮影を思い立つ。

 著者は体位交換やチューブを通して栄養をとる経管栄養など妹の介助に関わり、自らの家族への取材を重ねる。深夜の介助や医療ケアの大半を担う母、多忙な仕事と家庭の板挟みに悩んできた父、父母や障害のある姉に対し葛藤を抱き続けてきた双子の妹・由里歌。亜由未を中心とした家族の物語をたどる過程で、著者は障害とともに生きる困難だけではなく、生きることの喜びと豊かさを深く実感していく。「一緒にいることがスタートでありゴール」。「亜由未が教えてくれたこと」の核を表現した言葉として、ここに記して本書を薦めたい。




AERA 2018年9月17日号


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