米韓軍事演習の中止でパニックは愚か、軍事評論家・田岡氏が解説 (1/2) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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米韓軍事演習の中止でパニックは愚か、軍事評論家・田岡氏が解説

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田岡俊次AERA

米韓軍事演習の中止でパニックは愚か(※写真はイメージ)

米韓軍事演習の中止でパニックは愚か(※写真はイメージ)

 8月に実施する予定だった米韓軍の定例図上演習「フリーダムガーディアン」が中止される。だが、「南北の軍事力を比べれば、韓国全域が占領される懸念は低い」と軍事評論家の田岡俊次氏が解説する。

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 トランプ米大統領が「北朝鮮との非核化交渉中は米韓合同演習を中止する」と表明したため、日本では「韓国は北朝鮮軍に占領され日本が第1線になる」とか「東アジアの安全保障が揺らぐ」など、流言飛語じみた論評が続発している。まるで韓国軍の存在を忘れたような騒ぎだ。

 例年行われてきた米韓合同演習で最大のものは、従来3月から5月、今年は4月から5月に行われた「フォール・イーグル」だが、昨年も今年も参加兵力は韓国軍約30万人に対し、米軍は艦艇乗員も含め約1万人にすぎず、韓国軍の演習に米軍が儀礼的に加わった形だ。

 在韓米陸軍は人員1万9千人余、戦車約90輌、米空軍は8千人、戦闘機、攻撃機計64機の小振りな部隊だ。韓国陸軍は49万人、戦車2500輌(うち1500輌は比較的新しい国産)、空軍は580機だから、兵力の差が演習にも表れる。米陸軍は全体で47万人余だから、韓国陸軍より少ないのだ。

 米軍は冷戦終了直後の1990年には、韓国に陸軍3万2千人、空軍1万2千人を置いていたが、90年にソ連、92年に中国が韓国と国交を樹立、北朝鮮は孤立、衰弱したため、在韓兵力を削減してきた。主力の第2歩兵師団は当時2個旅団を持っていたが、現在は歩兵1個旅団に減り、最前線に近い東豆川(トンドチョン)・議政府(ウイチョンプ)などからソウル南方約70キロの平沢(ピョンテク)に移駐した。ここは烏山(オサン)空軍基地と港に近く、他地域に出動するのに便利なためだ。その1個旅団も常駐ではなく9カ月交代で本国から派遣される。

 韓国の国民総所得は今やロシアをしのぎ世界第11位で北朝鮮の約45倍、人口は2倍だから、米国とメキシコ(GDPで米は約18倍、人口2・5倍)よりも差が大きい。韓国の昨年の国防費392億ドルはドイツの443億ドル、日本の454億ドルに迫り、装備の近代化は着実に進んでいる。他方、北朝鮮の経済は苦境にあり、韓国と親密な中国、ロシアは北朝鮮にほとんど武器を輸出していないため、一部の対空ミサイルなどを除き装備の大部分は1960年代以前のソ連製やそのコピー、部品、燃料の不足のため戦車はほとんど動いていない様子だ。


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