95年、スイス・ジュネーブ大学の天文学者ミシェル・マイヨール教授(当時)らがペガスス座51番星という恒星を回る「巨大惑星」を見つけた。惑星の動きにともなう中心星の色の変化を見る「ドップラーシフト法」を使った。太陽系以外で初めて発見された惑星は、木星の半分ほどの巨大なガスの塊が恒星に張り付いたような灼熱(しゃくねつ)環境の軌道を回るというへんてこなものだった。ホット・ジュピター(熱い木星)と名付けられた。

 さらに99年、恒星の前を惑星が横切ると、その光がわずかに遮られて弱くなるという現象を使ったトランジット法による観測が実現し、さらに効率よく太陽系外の惑星が見つけられるようになった。

 望遠鏡の技術革新も効いて、太陽系外惑星の発見は続いている。NASAなどによると、今、確実に惑星とされるのは約3500個、候補も含めると5千個に達する。昨年は、NASAのケプラー宇宙望遠鏡で確認されたとして、1284個もの惑星が報告される驚きもあった。

 これらの発見は、惑星に関する科学をすっかり変えた。

●太陽系中心主義の崩壊

 惑星の形成に関する説明は、60年代から80年代までの段階ですでに確立されていた。京都大学の故・林忠四郎名誉教授らの「京都モデル」などによる標準シナリオは、ぐるぐる回るガスや微粒子が「円盤」状になり、それが凝集して微惑星をつくり、さらに衝突・合体して大きな惑星となって秩序ある太陽系をつくったというものだ。

 ところが、そのシナリオから外れた太陽系外惑星がどんどん見つかった。ひとつの恒星の惑星たちはひとつの円盤の上を同じ方向に回るはずだ。しかし、発見された惑星は、互いに垂直の軌道で回る星、逆方向に回る星、恒星に張り付くように回る巨大なガス惑星、まるで彗星のようにひしゃげた長い軌道を取る星など雑多で、これまでのシナリオでは説明がつかなかった。

 一方で、太陽に似た恒星なら、地球に似て水もある惑星を持つ割合は10~20%もあるということもわかってきた。

「惑星といえば地球を含む太陽系とそっくりのはずという中心主義は崩れた。その多様性の中で、学問の作り直しの真っ最中」

 と、惑星形成を理論的に研究してきた東京工業大学地球生命研究所の井田茂教授は言う。

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