ベーシックなものから、パステルカラーのものまで、デザインや色が多岐にわたるムスリム服。写真や動画撮影をするムスリム女性も目立った(撮影/写真部・岸本絢)
ベーシックなものから、パステルカラーのものまで、デザインや色が多岐にわたるムスリム服。写真や動画撮影をするムスリム女性も目立った(撮影/写真部・岸本絢)
井上里英香さんデザインの服。「ワールドコレクションからトレンドを抽出したものをモデストの条件に落とし込みました」(撮影/写真部・岸本絢)
井上里英香さんデザインの服。「ワールドコレクションからトレンドを抽出したものをモデストの条件に落とし込みました」(撮影/写真部・岸本絢)
井上里英香さん(32)/デザイナー/愛知県出身。中学生時代から自作の服を着ていた。文化ファッション大学院大学卒業後、Yohji Yamamotoパタンナー、ONWARDデザイナー等を経て独立(撮影/写真部・小原雄輝)
井上里英香さん(32)/デザイナー/愛知県出身。中学生時代から自作の服を着ていた。文化ファッション大学院大学卒業後、Yohji Yamamotoパタンナー、ONWARDデザイナー等を経て独立(撮影/写真部・小原雄輝)
井田勝康さん/マーナーコスメチックス社長(撮影/写真部・岸本絢)
井田勝康さん/マーナーコスメチックス社長(撮影/写真部・岸本絢)
ハラール認証のシャンプー、ヘアパックはサザンカ油を使用。パッケージは東南アジアの人が好む絵柄に(撮影/写真部・岸本絢)
ハラール認証のシャンプー、ヘアパックはサザンカ油を使用。パッケージは東南アジアの人が好む絵柄に(撮影/写真部・岸本絢)

 イスラム教というと、ヒジャブというベールを被るなど華美な服装は避けるイメージだが、イスラムの教えのなかで楽しめるファッションが続々登場している。

 昨年11月、東京都台東区の東京都立産業貿易センターで「ハラールエキスポジャパン2016」が2日間にわたって開催された。来場者は約6700人。3回目の開催となった今回、目玉の一つとなったのが国内初「ムスリムファッションショー」だ。

 ランウェーを歩くモデルの女性たちが身にまとうムスリム服。イスラム教徒は家族以外の男性に会う時は女性の魅力的な部分とされる髪、耳、首は「ヒジャブ」という布で隠すことが多い。また、手首から上と脚も出すことは少なく、体形が顕著に出る服装も基本的に避ける。宗教上、婚前交渉が禁止のため、男性を誘惑しないようにするためだ。

●グローバルな価値観で

 運営のハラールメディアジャパン代表の守護彰浩さん(33)は「東南アジアや中東から、日本でもムスリムファッションショーをしてほしいという要望があった」と開催理由を語った。

 10人ほどの外国人デザイナーが参加した中、唯一日本人の参加者だったのが、デザイナーの井上里英香(りえか)さん(32)だ。黒や白一色などモノトーンを基調に、背中に刺繍が入ったデザインの服など数点を披露した。国内開催のため、「日本で受け入れられやすいターバンのスタイリングをメインにした」と井上さん。

「最近、ムスリムファッションは『モデストファッション』とも言われています。英語のmodest(謙虚)という言葉の通り、肌を出さない慎み深いファッションという意味です。東南アジアの人たちが使い始めた言葉ですが、宗教に制限されない、とてもグローバルな価値観だと思います」(井上さん)

 もともとイスラム建築や幾何学柄が好きで、15年ごろからムスリム服の制作を始めた。東南アジア諸国に10回近く足を運ぶ中で、自分が好きでかつビジネスにできると思えたのがムスリム服だった。こだわる点は誰でも着られるということだ。

「◯◯専用など、着る人に線を引くのが苦手です。どちらかと言うと、日本人向けのムスリム服ではなく、ムスリムの人が着られる服を日本人も着られるように提案していきたいですね」

 まずは知名度を上げて、将来、売り上げをあげるのが目標だ。

 今回のエキスポでは116の出展ブースが並び、そのうち約20店舗がファッション関連だった。「musumime」代表の村上法子さん(41)も出展者の一人だった。村上さんは14年に独立し、日本のヒジャブブランドを一人で立ち上げ、上流から下流までの工程を手掛ける。18歳で豪州に留学した際、ムスリムのクラスメートを見て、「なんてきれいなんだろう」と思ったのがヒジャブとの出合いだった。

●自撮りコーデをアップ

 従来品のほとんどがポリエステル性のため、夏場は暑く、蒸れる。在日ムスリムの知人で熱中症や脱水症状を起こした人もいる。そこで考えたのが、遮熱性・接触冷感・吸水速乾性のあるヒジャブだ。以前、繊維関連の仕事をしていた経験を生かし、最適な素材を探し歩いている。村上さんはイスラム教徒ではないが、ヒジャブを着ることもある。「どうせビジネスムスリムでしょ」と揶揄されることもある中、「ヒジャブをより快適につけて過ごしてほしい」という思いで、現在デザインと機能性を両立させた製品作りを目指している。

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