ドイツ・ハンブルグの最終選考で、英語でプレゼンテーションする東大チームのメンバーたち。100回以上も練習し、自分以外のメンバーのパートも暗記して臨んだ(撮影/編集部・鎌田倫子)
ドイツ・ハンブルグの最終選考で、英語でプレゼンテーションする東大チームのメンバーたち。100回以上も練習し、自分以外のメンバーのパートも暗記して臨んだ(撮影/編集部・鎌田倫子)

 国内首位でも世界ランキングは23位の東大。その学生たちが航空問題解決策の国際コンテストに挑み、善戦した。

「最優秀賞はチーム・マルチファン(MULTIFUN)」

 名前を呼ばれたのは、東京大学の学生チームではなかった。ドイツ北部のハンブルクで5月27日に行われた最終選考。発表と同時に立ち上がったのは、インド人の学生たちだった。肩を抱き合い、喜びを爆発させながら壇上に向かう様子を、東大チームは悔しそうに眺めていた。

 欧州の航空機メーカー、エアバスが主催するコンテストは、“Fly Your Ideas”と銘打ち、航空業界の問題を解決するアイデアを世界中の学生が競う。隔年で開催され、これで4回目だ。500チーム以上が応募し、5チームが最終選考に残った。

 日本の大学で最終選考に残ったのは、今回の東大チームが初めて。彼らが発表したのは、鳥がエンジンに巻き込まれるなど、重大事故の原因ともなる「バードストライク」を減らすため、ドローン(小型無人飛行機)を使い、鳥を空港から離れた人工の営巣地「バードポート」へ誘導するアイデアだった。

 コンテストの応募に最初に手を挙げたのは3人だった。チームのリーダー宮谷聡さん(25)は大学院修士2年で、航空宇宙工学を専攻する。応募動機を「将来のキャリアにつながるから」と笑顔で語る、下心を隠さない明るい野心家だ。

 もう2人は、工学部システム創成学科4年の上西智さん(22)と中村友哉さん(21)。所属する学科では、異なる知識や技術を融合させてプロジェクトの推進を目指す研究をしており、コンテストはまさに実践の場だった。3人は、羽田空港の整備場を訪れた際にこんな現場の声を聞いた。

「バードストライクは、実は永遠の課題なんです」

 3人は工学系所属だが航空機の専門家ではない。だからこそ、自由な発想ができた。

次のページ