覚醒剤使用で逮捕歴が複数ある女性タレントの名を挙げ、「おれたちシャブ仲間の間で有名。『分けてやればセックスできる』って」

 ある日、多めにあげるよと声を掛け、ホテルに呼び出した。粉末10グラム入りの袋を渡すと、いそいそとバッグにしまった。1回の使用量は0.03グラムとされるから、333回分だ。

 満面の笑みを浮かべる彼女に、「人気者だったあんたが、なんでこんなことを」と聞くと、転落の経緯を話した。交際した男がヤクザだった。芸能活動に行き詰まりを感じていた。「気持ちが晴れるよ」と勧められた薬物を、遊び半分で使った。覚醒剤だった。

「はまっちゃった。仕事なんてどうでもよくなった。お金がないから、体を売ってクスリを手に入れているの」

 更生の場であるはずの刑務所も、芸能人との出会いの場だ。この組長が覚醒剤の所持や使用の罪に問われ、北関東の刑務所に入ったときのことだ。テレビで見覚えのある男がいた。

「◯◯かい?」
「はい」

 歌手として、一時人気を博した男だった。同じ罪名で先に入っていた。すぐに親しくなった。組長は自宅の電話番号を教え、「ここ出たら、いい付き合いしような」と告げた。

数年後、出所した組長に男から電話があった。

「覚醒剤ありますか?」

 配下の組員が、覚醒剤を定期的に届けるようになった。

AERA  2014年6月2日号より抜粋