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オフィス街にマンション増えると街が衰退? その理由

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兜町を歩くと空き地が目立つ。証券会社の入っていたビルがマンションに変わるケースもある。昼間の人通りもめっきりと減った(撮影/伊ケ崎忍)

兜町を歩くと空き地が目立つ。証券会社の入っていたビルがマンションに変わるケースもある。昼間の人通りもめっきりと減った(撮影/伊ケ崎忍)

最盛期に比べると、証券マンも証券会社も激減した。アベノミクス効果で、人は戻ってくるのだろうか(撮影/伊ケ崎忍)

最盛期に比べると、証券マンも証券会社も激減した。アベノミクス効果で、人は戻ってくるのだろうか(撮影/伊ケ崎忍)

 アベノミクスにわく株式市場。しかし経済の長すぎた冬は、いまだ証券業界に深い爪痕を残している。

 東京証券取引所が株式の超高速売買のコンピューターシステムを採用してから、値動きは人間の目では追えないほど速くなった。システムの本格的な稼働を前にパソコンの画面上で模擬売買の様子を見せられ、ディーラーたちはもはや自分の居場所がないことを悟った。兜町から歩合制のディーラーが少なくなったのは、その頃からだ。

 こうしたことを機に、個人投資家に転じた元証券マンは少なくない。特にこの1~2年は証券会社がリストラを重ね、割り増し退職金を支払ってまで社員を減らした。数千万円の退職金を元手に自ら相場を張ったり、仲間数人で資金を持ち寄ってちょっとしたヘッジファンドを立ち上げたりするケースもある。

 そんなとき降ってわいたのが、アベノミクスだった。

「こんなに強い相場は経験したことがありませんよ」

 昨年11月から半年に及んだ「アベノミクス相場」を、30年以上証券業界で働いてきたベテランたちでさえこう評価する。株式相場の動向を伝えるテレビ番組は視聴率が跳ね上がり、スポンサーには独高級自動車メーカーがついた。百貨店では高額商品が売れ、女性週刊誌でも株式相場の特集を組んだ。学生の間でも「証券業を第一志望とする新卒が増えてきた」(SMBC日興証券)という。

 足元の相場は一進一退が続くが、マーケットを中長期的に支えそうな道具立てもそろいつつある。来年1月から始まる株式や投資信託といった金融商品の値上がり益や配当金を一定額に限って非課税にする少額投資非課税制度、NISAも明るい材料だ。「個人投資家にとって大きな欠陥を抱えた制度。証券会社にとってもシステム投資負担が重く、黒字にならない」との冷めた見方も少なくないが、証券各社は個人投資家の資金を株式市場に呼び込む久々の好機と捉え、テレビや新聞、雑誌、ネットは広告出稿を競う証券会社や銀行でにぎわう。

 一方で厳しい現実もある。

「オフィス街にマンションが増えると、街そのものが衰退し始めるんですよ」

 ベテランの証券マンが兜町を歩きながら言う。マンションの住人は昼の間仕事に出かけるため、街は人が少なくなる。会社員に頼ってきた商店や飲食店は立ち行かなくなって廃業し、やがて街全体から活気が失われる。

 つい最近も兜町の片隅で証券会社のビルが取り壊されて更地になった。中堅証券同士の経営統合に伴って一方の本社ビルが空き、しばらくは賃貸物件として店子を募集していた。しかしそれも見つからなかったのだろう。工事の概要を知らせる案内板には、近くマンションの建築工事が始まると記されている。兜町は日本橋の中心街に隣接していながら、通り一本隔てただけで明らかに活気がなく、再開発の計画が頓挫したままの一角もある。

AERA  2013年10月28日号


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