2011年、全国の警察が扱ったDV(ドメスティックバイオレンス=配偶者からの暴力)事案は、過去最多の3万4329件に達した。DV加害者=夫というイメージが強いが、いまや夫に暴力をふるう「DV妻」も少なくない。それも「身体的暴力」より、文句や小言を繰り返したり罵詈雑言(ばりぞうごん)を浴びせたりする「言葉の暴力」が特徴だ。

 そうした中、ここ数年で増えているのが、「謝れないDV妻」という存在だ。

「本当はすぐに謝って、かわいい妻になりたいのに……」

 思いを吐露するのは、都内に住む専業主婦の女性(35)。

 大手商社に勤務する夫(40)と結婚したのは5年前。社内でも一、二を争うイケメンに熱烈にアプローチして結婚し、それと同時に専業主婦になった。ところが、じきに夫は仕事が忙しくなり、疲れからセックスレスに。しかも、休日になってもかまってくれない。そんなイライラから、気がつくとDV妻になっていた。

「このバカ」「ボケ」「カス」と悪態をつくのは日常茶飯事。蹴りの一つも入れることもあるという。

 それだけではない。最近では、「ふにゃちん」と、夫が一番気にしている下半身問題に触れることもしばしば。

 そのたびに夫が傷ついたことはわかっている。そして後悔もする。なのに、言葉のDVをやめられず、謝ることもできないのだ。

「女性は感情を抑えるのが難しい生き物。いったん感情的になって暴言を吐くと、すぐに謝ることはできません」

 と解説するのは、夫婦間の問題に精通した夫婦問題研究家の岡野あつこさんだ。

 岡野さんによれば、妻は、本当のことを正直に言っているだけ。そもそも、悪いと思っていれば、最初から言わない。だから夫を傷つけようとか、この言葉がDVだとまったく考えていない。夫に発奮してほしいと思ってふるう「愛のムチ」だというのだ。

AERA 2013年2月4日号