全国の書店員が「いちばん売りたい本」を選出する「本屋大賞」と、Yahoo!ニュースがタッグを組んだ「Yahoo!ニュース|本屋大賞 ノンフィクション本大賞」が11月8日、東京・ヤフー株式会社紀尾井町オフィスで発表されました。
 第一回受賞作品は、角幡唯介氏の『極夜行』(文藝春秋)。太陽が昇らない北極の極夜の冒険を描いた作品です。
 主催者の同社取締役会長・宮坂学氏は、「本屋大賞から誘いがあり、二つ返事で協力させていただきました。Yahoo!ニュースというサービスではノンフィクションに関わっている著者がとても多い。最前線でいろんなものを見ている方のお役に立てれば」と、新設の賞への思いを語りました。
 選考の対象は、2017年7月1日から2018年6月30日の間に日本語で出版されたノンフィクション作品全般(※海外作品の翻訳本は除く)。約100人の書店員の投票で9月11日にノミネート10作品を発表し、二次選考を経て大賞の発表となりました。
 本屋大賞実行委員会からは、「ノンフィクションは定義しにくい分野ですが、候補には全国から素晴らしい本が集まりました。手に取るのをためらうような重いテーマもありますが、込められた熱量を感じてほしい」というコメントが読み上げられました。
 大賞を受賞した角幡唯介氏は「今はスマホの時代で本が読まれなくなっています。インターネットには情報があふれていますが、検索して出てくるのは結果でしかなく、過程が見えなくなっています。情報はリスクを負って労力をかけなければいけませんが、危険を冒す必要があるのか、と言われることも。しかし発掘されなければその事実は死んでしまいます」とノンフィクションの意義を語りました。

 またノンフィクションに欠かせないのは、出来事が起きた瞬間に立ち会う「現場性」と、その出来事に自分が化学変化を起こす「当事者性」とのこと。第一回に選ばれたことに感謝の気持ちと、今後への期待を述べました。

 角幡氏と宮坂氏のトークセッションでは、「脱システム」をテーマに盛り上がりました。角幡氏は「脱システムはテクノロジーのように思われがちですが、システムの外側に出る一つの行為として『冒険』を選択しました」と語ります。宮坂氏は「外に行きたくても、不安でためらう人も多いですね。興味深いテーマです」とうなづいていました。
 角幡氏は今後、昔のエスキモーのように犬ぞりでの冒険を企画しているそうです。副賞として贈られた取材支援費100万円は「年間維持費250~300万円かかる犬ぞりの費用にしたい」と笑顔で語りました。
 全国の書店員からの推薦から絞り込まれたノミネート10作品は以下のとおり。
『一発屋芸人列伝』山田ルイ53世/新潮社
『軌道 福知山線脱線事故 JR西日本を変えた闘い』松本創/東洋経済新報社
『極夜行』角幡唯介/文藝春秋
『告白 あるPKO隊員の死・23年目の真実』旗手啓介/講談社
『日航123便墜落の新事実 目撃証言から真相に迫る』青山透子/河出書房新社
『ノモレ』国分拓/新潮社
『Black Box ブラックボックス』伊藤詩織/文藝春秋
『モンテレッジォ小さな村の旅する本屋の物語』内田洋子/方丈社
『ユニクロ潜入一年』横田増生/文藝春秋
『43回の殺意 川崎中1男子生徒殺害事件の深層』石井光太/双葉社
■Yahoo!ニュース|本屋大賞 ノンフィクション本大賞
https://news.yahoo.co.jp/promo/newshack/award/2018/