コーヒーはカラダに良いのか悪いのか。集中力や思考力がアップする、がん予防に有効である、呼吸機能や運動機能を高める、消化を助けるといった、さまざまなカラダに良いという説がある一方、カフェイン中毒になる、胃が荒れるなど、カラダに悪いという説も。



 豆の選び方、コーヒーの淹れ方、コーヒーの歴史、美味しさの秘密など、コーヒーにまつわるイロハを一通り学ぶことができる、本書『大人のコーヒー常識』では、コーヒーがカラダにもたらす影響についても解説がなされていきます。



 まず、コーヒーを飲むことで得られる薬理作用のうち、飲んだ数分後から数時間くらいのあいだに現れ、その日のうちに消えるという性質を持つのが急性作用。コーヒーに含まれる成分のうち、もっとも多くのこの急性作用に関係しているのが"カフェイン"です。そしてカフェインがカラダにもたらす影響の大部分は、アデノシン受容体というタンパク質に結合し、その作用を阻害することによって起こると考えられています。



 アデノシン受容体は、脳や心臓、腎臓などにあり、心臓をはじめとする組織で血管を拡張させ、腎臓では血管を収縮させる働きがあるそう。そのためカフェインがアデノシン受容体の働きを阻害すると、心臓では血管が収縮し、腎臓では血管拡張が起こることに。結果、カフェインを摂取すると利尿作用が働いてトイレに行きたくなったり、強心作用が得られるのだといいます。



 このようにコーヒーを飲むと、利尿作用によって老廃物を体外に排出し、代謝を促進、さらに心臓の働きを促して血行をよくする効果が期待できることから、美肌効果もあるそう。



 肌はターンオーバーといって、28日周期で入れ替わりますが、血行不良などによってこの周期が乱れると肌荒れを引き起こすことに。酸素は血液にのって全身に届けられますが、血行がよくないと十分に酸素が届けられず、ターンオーバーが乱れるのです。



 また、カフェインが体内に摂取され、その効果がピークに達するには30~60分かかるため、そのメリットを最大化するにはカフェインが少しでもアデノシン受容体と結びつくように、飲んだあとに昼寝をするのが効果的なのだそうです。



 ちなみにカフェインの摂取量は、1日400mg以下、コーヒーカップに換算すればだいたい5〜6杯ほどに留めておくことが推奨されています。もちろん、カフェインはコーヒー以外に、紅茶や緑茶、ウーロン茶などにも含まれているので、それらも踏まえ1日の適量を考えてみましょう。



 そんなカフェインですが、1819年、はじめてコーヒ―豆からカフェインを分離して"カフェイン"を発見したのは、ドイツ人の有機化学者・フリードリヒ・ルンゲ。彼がカフェインを発見したのは、イエナ大学在学中に親交のあった文豪ゲーテが、自分の不眠症の原因がコーヒーの成分にあると考え、ルンゲに自身が秘蔵していたモカの豆を調べるよう提案したのがきっかけ。カフェインの発見の陰には、ゲーテの存在があったのだそうです。



 本書にてコーヒーへの理解を深めれば、より一層、いつもの一杯も味わい深く感じるかもしれません。