母ひで子さんの91歳の誕生日を祝ったときの写真/2019年11月16日(本人提供)

──新田さんは6年半の在宅介護をしました。

 母を見送って今年の春で三回忌を迎えました。突然始まった介護で初めての体験だったし、変わっていく母と向き合う毎日に疲弊し、いろんな壁がありました。でもやれるだけのことはやって悔いはないです。振り返ると本当にいい思い出です。

──介護は大変というイメージを持つ人が多いと思います。

 私は大変さと同じぐらい幸せだったなぁ。同じ家に住む兄や夫と力を合わせ、介護従事者の力を借りて頑張れました。介護者を卒業してもまだこんなふうに介護に携わっているわけです。介護ができたこと、介護を通して母と密に過ごせたこと、介護を通していろんな方と出会えたこと、そのすべてに満足しています。本当に感謝です。

──そんな体験をもとにさまざまな場で講演をされています。

 タレント活動も長く続けていますが、今は介護に関する仕事の割合が大きくなってきています。講演も多く、往年のファンの方とお会いして、介護トークをするなんてこともしばしば。アイドル時代は、40年後にこんなふうになるなんて想像もしませんでした(笑)。当時のファンの方たちも同じように年をとっていて、介護世代になっているわけですからね。

──オフィシャルブログもVoicy(音声配信サービス)も人気です。

 ブログでは毎週金曜は「介護の日」と決めて介護ネタを発信しています。お薦めの介護食や福祉用具、グッズの紹介とか。在宅介護を楽しく長く続ける秘訣は、いかに味方を多く見つけて巻き込んでいくか、なんです。有益な情報だけを得ていくのではなく、つながるということが大事。リアルな場でもネット上でも、介護者同士で弱音を吐いたり、愚痴を言い合ったりするのは本当に必要です。気持ちの上での仲間を作る大切さをすごく感じました。

──親子での「ノート」作りを勧めています。

 講演をやっていくなかで「講演をするだけでは、その場で聞いてくださった方にしか伝わらない」というもどかしさを感じるようになりました。できれば、親子で講演を聞いてもらって、その熱が冷めないうちに親子で対話をしながら、人生のエンディングや、終末医療を一緒に考える。それをノートにまとめるといいのでは、と思いました。いわば「親子の信用を信頼に変えるノート」です。大事なのはそれを作っていく過程。人は自分のことを理解しようと時間を割き、耳を傾けてくれようとしている人を信頼しますよね。それは親とて同じこと。

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