こうなると、米中2大国が覇権を争う構図が変わり、特に経済面ではインドが世界最強国家となるのだろうか。日本総合研究所調査部の熊谷章太郎主任研究員はこう語る。
「人口規模だけですべてが決まるわけではありません。インドはインフラが未発達で、中国のように国家主導で一気に開発が進むわけでもないので、次の30年で中国を追い抜いて世界の工場になるかというと、まだまだ時間がかかるでしょう」
人口が減少に転じる中国の勢いは衰えないのか。
「労働力人口の減少が経済成長を一定程度下押ししても、それ以上に生産性を上げられれば、経済成長を維持できる。中国は少子化を警戒し、米国との競争のためにITや研究開発の分野に政府主導で相当お金をつぎ込んでいるので、人口減だけで衰退するかは判断できません」(熊谷氏)
50年の日本の人口は7千万~9千万人と推定されるというが、人口減イコール衰退ではない、というのは日本にも言えることだ。とはいえ、本当に考えるべきは覇権争いの行方などではない。前出の大泉教授が語る。
「食料難や環境問題など世界の課題を解決するために日本がどう行動するのか、今から考えていかないといけません。物質的な面で先進国の生活の質を落とすなど、私たちの生活を変えていく視野も必要になってくる」
(本誌・村上新太郎)
※週刊朝日 2023年3月10日号