東尾修
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丸刈りにしたオリックスの宮城大弥=6月11日 (c)朝日新聞社
丸刈りにしたオリックスの宮城大弥=6月11日 (c)朝日新聞社

 西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、オリックスの快進撃の原動力になっている若手について解説する。

【写真】丸刈りにしたオリックスの宮城大弥選手

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 オリックスが交流戦の中盤以降に勝利を重ねて交流戦最高勝率を手にした。リーグ戦再開後も勢いは止まらず、6月23日まで11連勝をマークした。球団では1984年の阪急以来という快進撃で優勝争いの主役に躍り出た。

 若い選手を我慢して使い続ける中嶋聡監督の執念がようやく実を結びつつあるといったところだろうか。私も西武監督時代の90年代後半、清原和博ら黄金時代を築いたベテランから脱却して、とにかく松井稼頭央ら若手を使い続けた。下位に沈んだチームをドラスティックに変えるには、若いエネルギーを爆発させるしかない。

 高卒2年目左腕の宮城大弥には驚かされた。これだけクセがなく、直球と変化球の腕の振りが変わらない10代の投手を見たのはいつ以来だろう。直球、変化球どちらかにヤマを張れば、ウラをかかれると対応できないキレと球威もある。さらに制球が素晴らしいので大崩れもない。もっと打者の力量を把握できるようになれば、さらにいい投球ができるだろう。

 現在22歳のエース、山本由伸は今や日本を代表する投手になりつつある。そこに19歳の宮城が急成長した。この若い2人がともに連敗するとは考えづらい。そうなるとある程度戦いを計算できる。しかも数年先まで大黒柱として活躍することだろう。打者でも19歳の紅林弘太郎などが試合に出続けている。そんな若手に主砲の吉田正尚、ベテランのT-岡田らが絡む。

 今年のペナントレースは東京五輪による中断期間をどう生かすか、生かし切ったチームが秋の優勝争いをすると踏んでいる。1シーズンを経験したことのない若手は夏場にへばる。その意味で、宮城ら若手がしっかりと休養をとれることは、秋の優勝争いにプラスになるのではないかとみる。

 ソフトバンクはこれまで何年も主力を張ってきた選手が、30歳代を迎えている。若手も台頭こそしているが、主力を乗り越えていくだけのパワーはまだ感じない。王者としてこの過渡期をどう未来につなげていくか。工藤公康監督としても、考える時期に来ている。

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東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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