岩井:実は宮内庁幹部らが一番気にしていたのは、「誰が官房長官になるか」です。手堅く過激なことはしなさそうな加藤さんに決まって、宮内庁の役人はほっとしたのではないかと思う。

御厨:菅新総理が皇室との関係をどう考えるのかがポイントですね。2月に、官房長官だった菅氏は、安定的な皇位継承について、「有識者への意見聴取を行っており、『立皇嗣の礼』の後に具体的な論議を行う」と発言しています。菅新政権は皇統や女性宮家の議論をどうするつもりでしょうか。

岩井:1年以内に総裁選と衆院選、コロナ下での五輪開催問題もあるなかで、皇室に構ってられないのでは。(自民党の)二階俊博幹事長や河野太郎規制改革相らが、女性天皇も容認するかのような発言をしているが、本気で矢面に立つ覚悟があるのかは疑問です。

御厨:そうでしょうね。

岩井:河野さんは、皇統の問題は、「早くやらないとリスキーだ」という言い方をした。しかし、15年後、天皇陛下は75歳、皇嗣殿下は69歳。悠仁さまは29歳、結婚の適齢期ですね。3方はご健在でしょうし、まだ崖っぷちとは思わない。

御厨:ただし、菅さんならば一気にやれる部分もあります。安倍さんの場合、支持母体である男系思想の右の勢力への配慮が出てくる。しかし、菅さんにしがらみはない。男系男子のイデオロギー的傾倒はないでしょう。

岩井:なるほど。

御厨:菅さんは、まず勝算と利益を考える合理主義者です。昨年末から水面下で識者からヒアリングをしていますね。意見集約もせず、だれに知らせるわけでもない。いま議論を進める合理性はないから、検討を続ける格好を取り続けている。

岩井:そうですか。

御厨:時期を見極めたときに実行するのが菅−杉田ラインだと思う。政権交代で、杉田さんは官房副長官を辞めると思ったが再任した。杉田さんは、「自分は退位の問題が終わったら安倍政権下でも副長官は辞める」と僕にはっきりおっしゃった。いまも続けるのは、菅政権下でも皇統の問題に連続性を持たせる気があるからだと思う。

岩井:問題は、皇統の議論が皇室本体が望む方向に行くのかです。

御厨:新聞などの世論調査では、「愛子天皇」賛成の声が高い。

岩井:だが、宮内庁の幹部と話をしても、「一刻も早く女性・女系天皇の容認を」「愛子さまを天皇に」という声は聞こえてこない。

御厨:やっぱりね。

岩井:思い出すのは、小泉内閣での、皇室典範改正の議論です。

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