魚介類や乳製品、豆類も認知症のリスクを下げるのにいいようだ。国立長寿医療研究センター(愛知県大府市)が長年にわたって地域住民を追跡調査したところによると、青魚などに含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)の血中濃度が高い人は、低い人に比べて認知機能が低下しにくい。牛乳、乳製品や、豆類、特に大豆製品に多いイソフラボンの摂取量が多いと、認知機能の低下リスクが低くなる。

 ただ、研究を主導してきた大塚礼さんは言う。

「単一の食品よりも、いろいろなものを食べるほうが認知症予防にいいのではないでしょうか。いろいろなものを食べている人は栄養摂取状態が良く、脳に必要な栄養を十分に取れていると思われます」

 60歳以上の男女570人の追跡調査では、最もバランスよく食べていた群(144人)は、最もバランスが悪かった群(146人)より44%も認知機能低下のリスクが低かった。

 さらに大塚さんは、サプリメントよりも食べ物で取ったほうがいいと指摘する。食事でいろいろ食べることは、かむことを含めてさまざまな身体活動を伴うので、

「その手間がいい影響を与えているはず。食事を豊かなものにしてほしいです」

 東京都健康長寿医療センター研究所の横山友里研究員も、バランスの取れた食事を勧める。丼物や麺類を好む人は少なくないが、

「穀類はそのものが悪いというより、穀類が多くなっておかずが少なくなるのがリスクではないでしょうか。高齢者は食べる量が少なくなっており、少ない量で質を高めることが重要です」

 丼物や麺類を食べる際には、量を減らしてでもおかずを加えたり、乳製品のように単品でも質の高いものを取り入れたりしたい。

(本誌・浅井秀樹)

週刊朝日  2020年10月23日号より抜粋