前にも書いたけど、セトウチさんに紹介されたマッサージ師は暴利をむさぼるし、インチキ尼さんから、セトウチさんが手に入れた膏薬(こうやく)でヤケド状態で、これも災難。病気は医師にまかせるのではなく、患者がちゃんと状況説明をして、両者でコラボレーションして初めて、的確な治療が可能になるということを色んな体験で学ばされました。ここまで書いたところで、まだまだ、怪しい治療があったことを思い出しましたが、今日はこの辺で。

 まあ、結論からいいますと、病気にならない生き方をすることですね。どの病気も考えてみると、病気になる原因は全部自分で作っています。僕の場合、ケガと病気が多いのは、どうも自分のメンドー臭さが原因になっていることが多いです。寒いけど厚着はメンドー臭い。糖分の摂り過ぎをセーブするのがメンドー臭い。風呂の湯がぬるいけれど熱くするのがメンドー臭い。散歩もメンドー臭い。爪を切るのがメンドー臭くてケガをする。

 こんな性格を直すと、かなり健康な生活ができるはずです。身体に対して充分なケアを、メンドー臭いという理由でおこたっていたからです。今からでも遅くないので、この性格を直します。今日はこれで。

■瀬戸内寂聴「氷菓追憶…アイスクリンの味に目閉じた」

 ヨコオさん

 まあ、このしつこい暑さ! 九十八年生きてきて、こんな暑い夏は記憶にもありません。

 ヨコオさんと同じく、初夏は五月十五日生れの私は、夏には強い方でしたが(と、思いこんでいたのでした)こんな暑さには手のほどこしようもなく、悲鳴のあげ通しです。

 徳島は夏めいてくると、いち早く、氷屋ののれんが軒の下にひるがえり、一銭からでもかき氷を売ってくれました。何年使っているのか、私が産まれてすぐ覚えたのが、この通りの向(むこ)う側の小さな何でも屋で、冬は焼き芋の匂いが早や早やとこの軒から通りへ流れだし、夏はどこよりも早く、氷と染め抜いた赤いのれんが、軒先にひらめくのでした。

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