「父も看送(みおく)り、母も看送ることができました。娘もずっとフランスで頑張っています。これからは、自由に自分のペースで生きていこうと思いました」

 新曲「フォーエバー・スマイル」のレコーディングでは、緊張したという。

「歌の楽しさや怖さを知ったうえでのレコーディングですから。アイドル時代はテレビ局にワッと連れていかれ、ワッと歌って、ワッと次の場所に連れていかれて。考える余裕もありませんでした。復帰して女優をやりながら、ときどきディナーショーで歌わせていただいたんですね。それで初めて、生で人前で歌う怖さを知りました。でもお客さんの反応もよく見え、歌の楽しさもわかりました」

 せっかく新曲を出したが、コロナ禍のため披露する機会が限られてしまった。

「今日、久しぶりに生放送で歌ったんですけど、心臓が飛び出るくらいドキドキして、皆をハラハラさせちゃいました(笑)。毎日、こういうことを経験したいけど……。でもこれは慌てずにゆっくりとやりなさいということだと思います」

 落ち着いた年代ゆえのゆとりだろうか。

「家でドラマやドキュメンタリーを見たり、フランスの絵画の勉強をしたりしています。背景を知った上で絵を観(み)ると、感じ方が違うでしょうから。コロナが落ち着いたら一番にフランスに行こうと思い、ネットやガイドブックを見ながら街を巡る妄想をしています」

 明日を語りだすと、飾り気のない低音が弾んだ。(本誌・菊地武顕)

週刊朝日  2020年8月7日号より抜粋