令和初となる初セリが1月5日、豊洲市場(東京都江東区)であり、今年もすしチェーン店「すしざんまい」を運営する喜代村が、青森・大間産の276キロの一番マグロ(本マグロ)を競り落とした。額にして1億9320万円(1キロ当たり70万円)。記録が残る1999年以降では、昨年の3億3360万円に次いで2番目の高値だった。
すしざんまいによると、一番マグロは当日のうちに解体され、全国55店舗へ。計約1万貫のすしになり、通常価格(大トロ398円、中トロ298円、赤身198円=全て税抜き)で販売された。
「部位によって値段の差はありますが、今年の一番マグロの卸値と何貫とれるかを概算すると、平均して1貫6万円くらいで売らないと元はとれません」(すしざんまい広報担当者)
なんとも太っ腹。「大丈夫なのか」と聞くと、
「ははは(笑)。また1年企業努力していくしかないですね」(同)
喜代村の木村清社長が一番マグロを競り落とすことは、いまや新年の風物詩となっている。
漁業に詳しい経済評論家の平野和之氏によると、宣伝効果は大きい。
「テレビCMは制作費だけでも1千万円かかる場合があり、1コマ流す枠代も視聴率によっては数百万円しますから、年間にして10億円単位がかかります。調査によると、『スシロー』は、20億円ほど広告に費やしているようです。それを『すしざんまい』は、初セリの話題がニュースやワイドショーに取り上げられることで、1年分の宣伝効果を見いだしていると言っても過言ではありません」
民放では店の名前が出たが、NHKはあくまでも「すしチェーン店」とし、店名を伏せていた。
「アドバタイズメントに対するアレルギーがあったのでしょうか。公共放送で宣伝・広告ととられるものは流せないですから」(平野氏)
平野氏によると、近海で取れるマグロは水揚げした港が産地とされるが、場所によって味は変わらないという。
「潮の流れが速い大間で、マグロの筋肉が発達し、イカを餌にしているからおいしいとブランド価値が付けられていますが、マグロは回遊魚なので、近海生ものはどこで取れても同じ。ちなみに、ほぼ同じ漁獲地の函館産なら、安く食べられる。どちらかと言えば、メディア側が正月になると“マグロ、マグロ”と騒いで盛り上げている感も否めません」(同)
(本誌・岩下明日香)
※週刊朝日 2020年1月24日号