そして、安倍政権がもっとも過去を変えたがる理由は、この政権の嘘や失敗の誤魔化(ごまか)しのため。文書の隠蔽(いんぺい)や廃棄、強引な閣議決定などは、そのためにしている。

 2007年に定義を決めた「反社会的勢力」、それを「その時々の社会情勢に応じて変化し得るものであり、限定的・統一的な定義は困難だ」と閣議決定した。首相夫人の権力の私物化が公になるたび、彼女は私人である(から公の場で説明する必要はない)と決めた。

 報道に対していちゃもんをつけるのも、やってしまったことに対して批判されるのが嫌だからだ。

 安倍首相は「国会では政策論争以外の話に多くの審議時間が割かれている」と愚痴ったが、それは紛れもなく安倍首相のせいである。過去を変えることに力を注ぐのは、愚かとしかいいようがない。魔法使いでもなければ、過去は変えられないのだから。来年こそは、こんな馬鹿みたいなことが終わりますように。

週刊朝日  2020年1月3‐10日合併号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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