昭和の即位礼までは、装束は着用した人に「下賜」するのが慣例だった。だが購入の資金は政府予算。平成の即位礼では下賜するわけにもいかなくなった。平成の装束は宮内庁の倉庫に保管され、令和の即位式に日の目を見るのだ。

 即位礼正殿の儀は、天皇や皇族方はもちろん、威儀の者として装束を身に着ける宮内庁職員らまで、全員が幾度かの試着やリハーサルに臨み、十分に動けるようになるまで練習する。

 30年を経ているだけに、汚れがとれない装束もなかにはある。その場合、練習着として活用される。

「もとをただせば、予算は国民の税金です。無駄遣いはできないため、冠や靴などサイズの決まっている小物類は早いもの勝ちですから、出遅れた者は大変みたいですよ」(皇室ジャーナリスト)

 こうした皇室の「節約術」は、今に始まったことではない。戦後数十年は皇室に予算もなく、皇族方の「結婚の儀」ですら、装束などは新調できず、男性皇族も皇族妃も宮家から譲り受けて式を挙げたという。(本誌・永井貴子)

週刊朝日  2019年11月1日号