延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー。国文学研究資料館・文化庁共催「ないじぇる芸術共創ラボ」委員。小説現代新人賞、ABU(アジア太平洋放送連合)賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞など受賞
延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー。国文学研究資料館・文化庁共催「ないじぇる芸術共創ラボ」委員。小説現代新人賞、ABU(アジア太平洋放送連合)賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞など受賞
村上JAMライブはJFN38局ネットで8月25日(日)、9月1日(日)19時から (c)朝日新聞社
村上JAMライブはJFN38局ネットで8月25日(日)、9月1日(日)19時から (c)朝日新聞社

 TOKYO FMのラジオマン・延江浩さんが音楽とともに社会を語る、本誌連載「RADIO PA PA」。今回はJFN38局ネットで8月25日(日)、9月1日(日)19時から放送される「村上JAMライブ」について。

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「村上RADIO」で春樹さんは少年のように初々しく、喜びに溢れてレコードをかけ、自分の物語を語る。良い音楽を一緒に楽しむのが最高のおもてなしだとでもいうように。

 年明けの最初の収録後、NYの話になった。「ザ・ニューヨーカー」は多くの村上作品を掲載しているが、その雑誌主催のフェスティバルに招かれた。滞在中、春樹さんはスペシャルライブを観た。それはブルース・スプリングスティーン。春樹さんと同い年だ。その模様を収録したアルバムもリリースされた。「できる限り個人的で親密な公演をやりたいと思っていたんだ。40年間プレイしてきた中で最も小さな会場だ。言葉と音楽だけのショーになる」とブルースは語っている。

「目の前で彼の演奏を観ることができた。ライブの最後は観客みんなで写真を撮る。向こうはそんな感じなんだ」と春樹さんが言い、僕はこんな提案をした。

 春樹さんの作家デビュー40周年をぜひやりたい。できれば「ピーターキャット」を再現しながら。滅多に公の場に姿を見せない春樹さんだけど、そこは思い切って「春樹さんも舞台に出て欲しいんです」

「ピーターキャット」は春樹さんがオーナーだったジャズバーである。だから打ち合わせは、その店があった千駄ケ谷のレストランを選んだ。

「イベントタイトルは『村上JAM』にしよう」と春樹さんが言うと、音楽監督の大西順子さんが即興演奏さながらの流麗なタッチでスマホを操作して並みいるミュージシャンに連絡、小一時間で「村上JAMバンド」を作ってしまった。クラリネット奏者のレジェンド、北村英治さんも。

 春樹さんが上京した68年に初めて観たのが渡辺貞夫クインテットだった。新宿紀伊國屋書店裏のピットイン。「一番前で聴いていると、貞夫さんがタバコをくわえて火を探していた。僕がつけてあげたんだ」。そんな春樹さんの話を貞夫さんに伝えると、「演奏時間をできる限り多くくれ。僕なりにお祝いしたい」

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延江浩

延江浩

延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー、作家。小説現代新人賞、アジア太平洋放送連合賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞、放送文化基金最優秀賞、毎日芸術賞など受賞。新刊「J」(幻冬舎)が好評発売中

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