モンサンミッシェルを背景にぽつんとある鳥居(筆者の知人提供)
モンサンミッシェルを背景にぽつんとある鳥居(筆者の知人提供)
広島県廿日市市の宮島・厳島神社(C)朝日新聞社
広島県廿日市市の宮島・厳島神社(C)朝日新聞社

 フランスを代表する世界遺産のモンサンミッシェル。夏休みをフランスで満喫している友人から写真が送られてきた。満潮になると海に浮かんだように見え、かつての修道院からもれる明かりが水面に揺れ、神秘的でロマンチック……。

【写真】厳島神社と深い関わりがあるらしい

 ん、あれ?

 あれは何?

 写真右下に写り込んでいる建造物。目を凝らしてみると、鳥居? 角度が悪いが、確かに朱色をした鳥居である。

 なぜ、こんなところにぽつんと鳥居、なのか。

 謎を解く鍵は、広島県廿日市(はつかいち)市のホームページ(HP)にあった。

 HPによると、日本とフランスの両政府観光局が、両国の国交樹立150周年となった2008年を「日仏観光交流年」と位置づけ、互いに観光キャンペーンを展開。その際に、日本政府観光局が宮島を、フランスに最も紹介したい観光地のひとつに選んだことがきっかけで、モンサンミッシェル市と宮島のある廿日市市の交流が始まったとある。翌年、両市は観光友好都市提携を結んでいる。

 廿日市市といえば、世界文化遺産に登録されている宮島の厳島神社が有名だ。そう、どちらも海に浮かぶ世界遺産なのだ!

 さっそく鳥居の件について廿日市市の観光課に問い合わせてみると、「フランス側が設置したもので、市は関与していない」との回答。厳島神社の担当者も、「よくわからない。御霊を移すなど儀式的なことはしていないと思う」とのこと。

 それならばと、フランス大使館に尋ねると、「両市の観光友好都市提携10周年の記念に、モンサンミッシェル市長が知人の大工に造ってもらったものなんです。今年の7月上旬に廿日市市長の訪問に合わせて鳥居を建てました」。

 これが、なぜぽつんと鳥居、の真相だ。

 少々シュールに見えなくもないが、現地の人からは物珍しがられて、好評らしい。簡素とはいえ、フランスならではの「お・も・て・な・し」だったようだ。

 モンサンミッシェルの鳥居は、9月末までの設置を予定している。観光で訪れる方は、期間限定の貴重なコラボをお見逃しなく。(本誌・岩下明日香)

※週刊朝日オンライン限定記事