患者と接する機会が少ない「病理医」が、がん治療で重要な役割を担う理由 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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患者と接する機会が少ない「病理医」が、がん治療で重要な役割を担う理由

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中寺暁子週刊朝日#ヘルス

国立がん研究センター中央病院 病理・臨床検査科 医長 元井紀子医師

国立がん研究センター中央病院 病理・臨床検査科 医長 元井紀子医師

 病理医って何をする医師?と疑問に感じる人も少なくないだろう。患者と接する機会は少ないものの、病理医はがん治療において重要な役割を担う。がん手術における「術中迅速診断」はその真骨頂ともいえ、診断結果によって臓器を切除する範囲が変わってくる。好評発売中の週刊朝日ムック「手術数でわかるいい病院2019」では、病理医を取材した。

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 腫瘍が悪性か良性かの診断は、患者にとって大きな意味を持つ。その診断をするのが、病理医だ。国立がん研究センター中央病院で病理医として勤務する元井紀子医師はこう話す。

「患者さんの検体はすべて保管しているので、検査の数年後も、診断が正しかったかどうか後で答え合わせができます。決してミスはできないというプレッシャーを常に感じています」

 病理医の仕事は診断や研究など多岐にわたるが、病理診断を大きく分けると「病理解剖」と「外科病理」がある。病理解剖は、解剖により生前の病気の状態や死因を検討することだが、画像診断の進歩などにより、実施数は減少している。現在主となっているのが、患者のからだから採取した組織・細胞の形態を顕微鏡で観察し、腫瘍が良性か悪性か、悪性であれば性質や病期などを診ていく外科病理だ。

「手術前の細胞診や生検は採取できる組織が少ないです。そこからいかに全体を類推して診断するか、病理医の経験や病院としてどのような診断手段を持っているかが関わります」(同)

 病理診断をするためには、組織を染色して診る必要があるが、鑑別が難しい場合には免疫染色など、別の染色や遺伝子検査を用いることで見分けられることがある。手段とは、こうした染色方法などを指すが、その機器整備には費用がかかるため、どの病院でもそろえられるわけではない。手術件数が多い病院ほど、病理医は経験を積みやすく、病院は診断手段をそろえやすい。

 手術後に切除された組織を観察し、病期を確定、がんがとり切れているかを確認するのも病理医の役割だ。切除した組織をすべて見るわけにはいかないので、がんが最も深く入り込んだ部分を切り出して評価する。

■病理医の技量が問われる術中迅速診断

「切り出す部分によっては、病期が変わってしまいます。病期は薬物療法をするかどうかなど、術後の治療に関わる要素なので、切り出し作業は病理診断において大切な過程です」(同)

 最近は術後の生活を考えて、がんの切除範囲をできるだけ少なくし、患者の負担を減らすことが重視されるが、がんのとり残しがあっては意味がない。そこで手術中に切除した組織の切除断端に、がんがないかなどを病理医が調べる「術中迅速診断」が実施されることもある。術中迅速診断の時間は、10~15分程度。結果を手術室に報告し、必要があれば切除範囲を広げる。

「術中の診断は通常より標本の質が落ちます。質の悪い標本から正しい評価をするには、病理医の経験がものを言います。術前カンファレンスで外科医から情報を得ておくことも重要です」(同)

 薬物療法の進歩で病理医の役割はさらに大きくなっている。特定の薬物が効くかどうかは、遺伝子異常の有無で決まるが、その評価をするのも担う。

「がんの種類ごとに高い専門性が求められ、知識を更新していかなければなりませんが、病院に病理医が少ないと難しい面もあります。診断に納得いかない場合、病理のセカンドオピニオン外来を実施している病院で相談するのもいいでしょう」(同)

◯国立がん研究センター中央病院病理・臨床検査科医長
元井紀子医師

(文/中寺暁子)

※週刊朝日ムック「手術数でわかるいい病院2019」から


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