続く「landslide」は、フォーキーでカントリーの要素も伴う。抑制の利いたストリングスが効果的に用いられている。歌詞については“様々に不安定な状況や心境を、少し遠くから、あるいは未来から眺めているような不思議な風景がモチーフ”とし、“東日本大震災から日の浅いうちに書いたことも関係しているかも”と触れている。

「How Can I Do?」の曲調、サウンドはビートルズを意識している。傷つき、焦り、不安を抱え、自身を見失い、一歩を踏み出せない主人公が“どのように歩きだすか”がテーマという。岸田の甘く切ない歌いぶりは、これまでになかった試みだ。

 表題曲の「ソングライン」は、岸田が奥田民生らと結成したバンド、サンフジンズのために書いた曲。ビートルズへのオマージュ的サウンド展開だ。左に位置したドラムス、テープ・コラージュ、ビートルズの『サージェント・ペパーズ~』期を思わせるストリングス、ジョージ・ハリソン風のスライド・ギターなどが興味深い。ビールやウイスキーの銘柄も登場する歌詞では“流れゆく時代、老いゆく人々、去るもの、生まれ来るもの、目の前にあるものについて”書いたとし、結局は“自分自身、時代感、世代観がにじみ出たもの”と明かしている。

「Tokyo OP」はプログレ的インストゥルメンタル。その演奏要素だが、レッド・ツェッペリン、イエス、ピンク・フロイドなどに交じってドリーム・シアターの名があるのがロック・マニアの岸田らしく、クラシック的な要素も。くるりのイメージを打ち破る曲だ。

「風は野を越え」では90年代のシューゲイザーやグランジを意識し、歪んだギターをフィーチャーした。スローでダークな曲だ。シンプルなコード展開と粘着的なメロディーが対比を見せる。

「春を待つ」は20年以上も前に書かれ、“とても自然に気負うことなく、いい曲が出来た手応え”を持ちながら、結果的にお蔵入りした曲だという。生ギターの弾き語りを主体にした叙情的な曲で、途中から加わる屋敷豪太のドラムスが効果的。作詞、作曲や音楽的な背景からは、はっぴいえんどの存在がうかがえ、プロコル・ハルムへのオマージュも。当時を物語る“青さ”が魅力の曲だ。

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