自動車業界の専門家は、eパワーは新しい技術ではないが、シンプルな仕組みと手ごろな価格にしたことが良かったと指摘する。トヨタなどほかの自動車メーカーは、ハイブリッド車やディーゼルエンジン車などで先行しており、追いかける日産には思い切った新型車の開発が求められていた。

「日産の国内販売はじり貧だったが、ようやく他社と違う面白い商品が出てきた。eパワーの広告宣伝も上手だった」(アナリスト)

 ようやくという言葉の背景には、日産がグループとして国内よりも海外市場に力を入れてきたことがある。

 1999年に経営危機に陥った日産を仏ルノーが救済し傘下に収めた。その日産は、燃費不正問題で経営が苦しくなった三菱自動車を2016年に傘下に入れた。昨年の自動車の世界販売台数を見ると、日産三菱・ルノー連合が前年比6.5%増の1060万台。トヨタグループを抜いて、フォルクスワーゲングループに次ぐ2位に躍進している。その原動力は、中国や米国など海外市場だ。日産三菱・ルノー連合が国内市場で販売したのは約69万台で、全体のわずか6.5%。

「世界第2位の自動車メーカーグループとなったが、国内市場はあまり重視されず、キーポイントとなる商品が入っていなかった」(同)

 日産立て直しの顔となったカルロス・ゴーン氏が昨春に社長兼CEOを退任したことも、国内重視のきっかけになったと言われている。ゴーン氏は日産と三菱の会長、ルノーの会長兼CEOをいまも兼任しているが、3社連合の調整を図る仕事が主だ。日産の社長にはたたき上げの西川廣人氏が就任した。別のアナリストはこう指摘する。

「ゴーン氏の元で進んだ過度な中国・米国重視が見直されるとの期待がある。eパワーがこれからも評価されれば、トヨタが国内市場で食いすぎているシェアを是正できる可能性もある」

 調査会社カノラマジャパンの宮尾健代表は「トヨタのシェアを食っていくのは間違いない」と話す。

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