日立製作所の子会社、ホライズン・ニュークリア・パワーの原発建設予定地(c)朝日新聞社
日立製作所の子会社、ホライズン・ニュークリア・パワーの原発建設予定地(c)朝日新聞社
経団連の次期会長への就任が決まった日立製作所の中西宏明会長(c)朝日新聞社
経団連の次期会長への就任が決まった日立製作所の中西宏明会長(c)朝日新聞社

 経団連の次期会長に5月、中西宏明・日立製作所会長が就任する。政府の援助なしには成り立たない原発事業を抱える日立。政治に「お願い」をする企業のトップが、「財界総理」になる。ジャーナリストの山田厚史氏がその内実を調査した。

【写真】日立製作所の中西宏明会長

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 英国の西部にあるアングルシー島。かつてバイキングが支配したこの島に、日立はウィルヴァ・ニューウィッド原子力発電所を計画している。2019年着工、20年代半ばの運転開始をめざす。すでに地元説明会が行われ、建設の最盛期には地元から9千人を雇用する。英国南西部・オールドベリーでも、同規模の原発計画が進んでいる。

 この計画はドイツ資本のホライズン・ニュークリア・パワー(ホライズン)が進めていたものだ。英国はサッチャー政権のころから「温暖化対策には原発」との方針で、外国から投資を呼び込んだ。それが東京電力の福島第一原発事故で状況が変わる。ホライズンは売りに出され、日立は12年、約900億円で買収した。

 国内での新設は難しいと判断した日立は、新天地を英国に求めた。当時の社長が中西氏。「技術水準を高めていくには原発新設に挑戦し続けるしかない」と考えたが、その決断が経営の重荷になった。

「インベスタブル(投資適格)と説明するのが、正直申し上げて難しくなった。これは事実だと思っています」

 2月13日の会見でサラリと語った中西氏に、財界担当の記者らは驚いた。英国の原発事業は危ない投資だと認めたようなもの。一体、どういうことなのか。

 3.11事故をきっかけに原発の安全基準は厳しくなった。工費は高騰、工期は長くなり、130万キロワット1基で5千億円と見られていた建設費は3倍に跳ね上がった。日立は東芝の二の舞いになりかねない。

 東芝は子会社のウェスチングハウス(WH)の原発事業で発生した損失で、経営危機に陥った。日立はこれを教訓に、100%子会社のホライズンを連結決算から切り離すことを考えた。外部から投資を呼び込み、持ち株を50%未満(計画では33%)に下げ、連結子会社から外す。切り離しができないと事業にゴーサインを出せない、と主張するようになった。

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