北原みのり「残念すぎるエロと公共」
連載「ニッポン スッポンポンNEO」
作家・北原みのり氏の週刊朝日連載「ニッポンスッポンポンNEO」。北原氏は、壇蜜さんが出演した宮城県のPR動画をテーマに筆をとる。
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エロと公共について考えさせられる機会が続いている。鹿児島県志布志市のうなぎPRのうな子(スクール水着姿の女性を男が「育てる」目線で追いかけ、ローションでぬるぬるのペットボトルを持ったりなどする)は記憶に新しいが、最近では宮城県知事肝いりの壇蜜さん起用のエロPRが話題になった。
「殿方に涼しいおもてなしをすること」が使命という壇蜜さんが「肉汁とろとろ」「ほしがりなんですから」などと壇蜜さん的なセクシーさでねっとり語るなど、性的メタファーに溢れている。復興関連予算から2300万円も使っての、エロだ。「殿方」ではない私はそもそも呼ばれてないけれど、宮城県、距離が遠くなってしまった。
壇蜜さんのエロを私は好きだった。「あなたたち、こういうのをエロいって思っているんでしょ」と、男の考えるエロを、ごそりと脳から取り出して眼の前で不敵に微笑みながら実践するような不気味さと爽快感、そしてやらされてる感ゼロが好きだった。それでも、行政のCMだと、とたんに壇蜜さんのエロが体制側に見える。いくらもらったんだろう、とか下世話なことをついつい考えてしまう。残念だ。
とはいえ、この手の批判をすると必ずこう言いたがる人がいる。「これが男女逆だったらフェミニストはどうするの?」

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