フジマキが分析 日本で米国式のガバナンスシステムがうまく機能しない理由
連載「虎穴に入らずんばフジマキに聞け」
商工中金の不正問題でも取り沙汰された企業のガバナンス問題。“伝説のディーラー”と呼ばれた藤巻健史氏は、アメリカと比較し、日本の行く末を案じる。
* * *
女性国会議員が秘書に暴言を吐いた時の音声が、テレビで盛んに流された。そんな頃、我が社でかつて働いたイクコさんからメール。「社長も気をつけてくださいね。秘書に叱られる音声が流出しないように。私も恥ずかしい思いをするので」
そういえば、よく怒られるよな~。「こぼさないでください。私は介護のために雇われたわけではありません」「ネクタイをみそ汁に浸さないでください」「議員、部屋はゴミ箱ではありません」……。
★ ★
以前に書いた商工中金の不正問題をはじめ、ガバナンス向上は企業の課題。まずは取締役会の役割が大きい。しかし、米銀に15年間勤めた私は、日本の取締役がガバナンス機能を真に果たしているのか疑問に思う。米国のシステムをまねしても、うまく機能しないのではないか?
米国では取締役は株主の代表で、株主の立場から経営陣を監視する。取締役は多くの株を保有している。社外取締役が過半の企業が多いと思うが、彼らは就任時に多数の株を供与されているのではなかろうか?
株主代表の取締役会の監視は、私の秘書が私を監視するほどに厳しくかつ真剣だ。ガバナンスがしっかりしていないと不祥事で株価が下落し、自分自身も大損してしまうからだ。
私が勤めていたモルガン銀行は、新しい金融商品を発売する時、レピュテーションリスク(=会社の評判が下落するリスク)をとても気にしていた。
「この金融商品は、顧客に不測の損害を引き起こし会社の評判を落とす可能性があるかないか」などのチェックだ。レピュテーションを落とすと株価は大幅下落するから、その可能性が高いと取締役会で問題視される。
取締役はブレーキ役だけではなく、経営陣を叱咤激励するアクセル役も果たす。経営陣が死ぬ気でがんばらないと、これまた株価が下落する。
