あのライヴに出演するのは最初からあまり乗り気ではなかったんだ。なぜやったのか、自分でも判らない。今でも不思議だよ(笑)。映画に収録されることを拒絶したのは、自分の靴が気に入らなかったからなんだ。田舎に住んでいて、庭作業もするから、靴が泥だらけだった。ワウ・ペダルを踏み込むときにカメラが足元をアップにしているんだ。あの時期はグラム・ロック全盛だろ? デヴィッドとギタリストのミック・ロンソンがきらびやかなコスチュームを着ているのに、俺だけあまりに見すぼらしい格好だった。デヴィッドは俺の意見を尊重して、あのシーンをカットしてくれた。正直、罪悪感はあったね。幸い友情が壊れることなく、彼とはずっと友達だったよ。

──ライヴの演奏については?

 正直あまり気に入らなかった。自分はここで何をやっているんだろう、って気がずっとしていたんだ。もちろんデヴィッドが声をかけてくれたことには感謝しているけどね。彼は俺を自分のバンドに入れたかったと言っていたよ。俺自身は誘われた記憶はないんだけどね。彼は自分のバンド、スパイダーズ・フロム・マーズのギタリスト、ミック・ロンソンを指して「彼が僕のジェフ・ベックだ」と言っていた。

──15年12月28日にはモーターヘッドのレミー・キルミスターも亡くなっています。彼はあなたと「ワイルド・シング」(トロッグスのカヴァー)を共演してシングルとして出そうと話していたのに、あなたが単独で出してしまったと残念そうに話していました。

 実際のところ、何が起こったのか俺にも判らないんだ。レミーと話していて、「『ワイルド・シング』は史上最高のヘヴィ・メタル・ソングだ!」と盛り上がって、一緒にレコーディングしようって話になった。でも結局2人のスケジュールが合わなくて、俺が既にギターのパートを録音済みだったんで、俺だけでシングルとして発売したんじゃなかったかな? レミーとは冗談を言い合う仲で、ぜひ一緒にやってみたかったんだけどね。それがもう実現しないのは残念だ。彼の魂が安らかに眠ってくれることを祈るよ。

週刊朝日  2017年2月17日号