その手のパフォーマンスは枚挙に暇がない。舛添要一前知事時代に決まった外国人観光客を案内するボランティアの制服をヤリ玉に挙げたのも好例だ。

「制服はデザイナーに依頼するなど製作費に3千万円以上かかっています。声高に五輪会場の整備費の抑制を言うのとは裏腹に、言っていることがどうにもチグハグです」(都職員)

“小池劇場”の迷走は、これにとどまらない。現在の築地市場を横断するオリンピック道路、環状2号線の開通も、不透明になった。

 小池知事が示した移転のスケジュールが、最短でも2017年冬以降となったからだ。2号線は港区の新橋から築地移転先の豊洲までの3.4キロで事業費は1750億円に及ぶ。延伸先である晴海や有明地区には、東京五輪の選手村や競技会場の建設予定地があり、重要な輸送路となる。だが、五輪開催までに築地の地下にトンネルを掘る本来の計画は物理的に不可能に。知事は築地市場移転後、地上に道路を通すなどの措置を提示した。建築エコノミストの森山高至氏はこう言い切る。

「移転しても中止しても2号線は開通できます。ほぼ完成している暫定道路を築地川側に橋げたを建てて拡幅すれば、片側2車線の道路は可能です。さらに隅田川沿いに晴海通りに向かって道路を通せば渋滞は緩和できる。橋の手前はクランクするが、信号をつけて対応する。事業費も数十億円程度で済むはずです」

 だが、都建設局は本誌の取材に対し、困惑気味にこう語った。

「築地移転の延期が続けば、暫定道路を含め迂回ルートの確保は困難です。暫定道路には市場業者の荷物などが置かれ、通行することはできない。迂回路は知事に確認しないと何とも言えませんが……」

 築地移転延期に対して、市場業者の間では賛否の声が交錯する。仲卸業者には、「豊洲への設備投資のためのお金の返済や、リース代が発生する」と頭を抱える業者がいる一方、11月で廃業を考えていた業者らは「生き延びられる目も出てきた」と喜ぶ。業者を調査した尾崎あや子都議(共産党)が語る。

「仲卸さんたちは、いま使っている冷蔵庫や水槽、ダンベが豊洲の店舗の規格に合わないから買い替えています。しかも一斉移転なので、特注が殺到して備品代もかなり高騰したそうです。もともと都が紹介したメーカーです。いったん都に買い取ってもらうように申し入れが行われています」

 小池知事は業者への補償にも言及。来年4月から補償金の申請と支払いを実施し、それまでは限度額1千万円のつなぎ融資を12月から開始するという。

 補償は市場会計から出すと知事が説明したため、業者から反発の声も上がった。

「市場会計だけでは賄えないので、いずれ一般会計(都税など)から支出せざるを得ないでしょう」(同)

 だが、逆風の中でも小池劇場はまだまだ続く。(本誌・亀井洋志、上田耕司)

週刊朝日 2016年12月9日号