守勢に回った小池知事 (c)朝日新聞社
守勢に回った小池知事 (c)朝日新聞社

 ふたを開けてみれば、元の木阿弥ということか。世論の追い風を受けて五輪の無駄に切り込んだ小池百合子東京都知事だったが、注目の4者協議では森喜朗会長が率いる五輪組織委員会、国際オリンピック委員会(IOC)にかなり押しこまれた。クリスマスまでに逆襲はあるのか?

 都政改革本部の調査チームは、ボートとカヌー、バレーボール、水泳の3競技施設の整備費が1578億円にまで膨張したことを問題視し、代替案を提案してきた。小池知事は特にボート・カヌー会場の宮城・長沼案にはご執心だった。

 だが、11月29日に都内のホテルで行われた都と政府、五輪組織委、IOCによる4者協議で、小池知事はボート、カヌー会場は当初案の「海の森水上競技場」で、水泳会場も同じく「五輪水泳センター」で行うとの考え方を示した。(ただし、水泳会場の観客席は2万から1万5000席に減らすなどと主張)。焦点だったバレーボール会場については有明アリーナ(江東区)の新設、既存の横浜アリーナの活用という2案が激しく論議されたが、小池知事の発案でクリスマスまで判断を先送りした。

五輪組織委員会はバレーボール会場について横浜アリーナは輸送面を含めて困難として、有明アリーナの新設を主張。森会長は「そもそも、横浜の了解は取れているのか?クリスマスまで何をやるんですか?」と小池知事の姿勢に疑問を呈した。小池知事は「(有明アリーナの)404億円は類似の建物に比べて高い。建築の関係から見直す」とも反論した。

長年、都庁に勤務した中央大学経済学部の佐々木信夫教授が語る。

「4者協議といっても、IOC主導で決められれば、都は従うほかありません」

 佐々木教授はバレーボールも原案どおりの有明アリーナに回帰するとみる。

 元都職員で、鈴木知幸スポーツ政策創造研究所代表が言う。

「小池さんの理念がまちがっていたわけではありませんが、あまりにも遅すぎた。3会場は整備業者との契約が、今年2月に済んでしまっている。海の森だけで違約金が最大100億円になると試算されています。小池さんもバッハ会長や国際競技団体の首脳らの要請を受けて察知したはずです。都民の支持という追い風がこのままでは逆風になりかねない、と。それで小池さんは、代替案は潰されたという格好にしたかったのでしょう」

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