岩井:両陛下は30年間暮らしたいまの東宮御所を懐かしがっておられるとも聞きます。テニスコートもありますし、戻るのもいい。

園部:小泉内閣の有識者会議から10年、野田政権の女性宮家の論点整理からも4年弱が過ぎました。時間を浪費してしまったという部分がある。内閣官房に研究のための部屋ができて、宮内庁の人たちとの接触の場所になっているとも聞きます。しかし、具体的な問題を考えることなく、皇族の減少にも有効な対策を打ち出せていない。女性宮家の問題も十分ではありません。

岩井:天皇の生前退位については、役人なり政治家が陛下に、「引退なさっては」とは言えない。ご本人がボールを投げたというのは、それしかなかったのだなという気がします。

園部:これからは、政府が対応して着地させなければならない。有識者会議を開くという意見があるが、人選が難しい。

岩井:私も有識者会議を取材して、園部さんが交通整理に苦労するのを見ました。専門家は皆さん信念があるから、コンセンサスをとるのが大変。有識者会議方式もよしあしです。

園部:皇室の専門家は、過去の自分の発言を曲げることが難しいので、柔軟な議論ができないのです。そうした場合は、政府が誰からも文句がつかない原案をつくり、形式的に有識者会議に出すのです。皆さんのご意見は承りました、という形で進めるほかはないですね。

週刊朝日  2016年8月26日号より抜粋