「生前退位」報道から一夜明けた14日、葉山御用邸を出て皇居に向かう天皇、皇后両陛下 (c)朝日新聞社
「生前退位」報道から一夜明けた14日、葉山御用邸を出て皇居に向かう天皇、皇后両陛下 (c)朝日新聞社

 天皇陛下が明治以降初となる「生前退位」の意向を示している──。7月13日夜にNHKが報じた「スクープ」を受けて、世間は騒然となった。高齢に無理を押しての天皇の公務と、次代の皇太子が世間でいう60歳定年に差し掛かろうとしている現実。陛下自ら説明するとの話が出ているが、その内容とは……。

「年齢のこともありますから、私たちも疲れてしまったわ」

 数カ月ほど前、皇后さまは、親しい知人にこう漏らした。両陛下と親交のある人たちの幾人かは、こうしたため息を耳にしている。

 天皇陛下は82歳、そして皇后さまは81歳。ともに高齢の両陛下の日程は、執務や公務でほぼ毎日埋まり、心身ともに休むいとまもない。両陛下は11日から神奈川県にある葉山御用邸に静養のため滞在していたが、この間も天皇陛下は執務を続けていた。

 そして両陛下の静養が続く13日、NHKが午後7時のニュースで、「天皇、皇后両陛下が、生前退位の意向を持っている」と報じたのだ。新聞・テレビの皇室担当記者が詰める宮内記者会は、蜂の巣をつついたような騒ぎとなった。

 だが、宮内庁も首相官邸側も当初から一貫して「報道されたような事実は一切ない」と否定を続けた。14日の会見で、宮内庁トップの風岡典之長官は、「陛下は憲法上の立場から制度について具体的な言及を控えており、そういう事実はない」と発言。天皇は国政に関する権能を有しないと定めた憲法第4条を引き合いに出し、官邸の政権幹部も「憲法上の問題から(皇室典範改正を伴う)生前退位は無理だ」と語った。

 肝心の陛下の胸中はどうなのか。風岡長官や山本信一郎次長、そして宮内庁幹部は、「陛下のお気持ちを第三者が、あれこれ忖度するわけにはいかない」と口をそろえる。それでも、冒頭のように両陛下が気力、体力ともに衰えたとの嘆きを周囲に漏らしている話は聞こえてくる。

 実際、昨年夏の全国戦没者追悼式や他の式典で、天皇陛下がお言葉や式典における手順のタイミングを誤ったことが注目された。

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