北原みのり「落ちた『穴』を覗き続けて」 (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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北原みのり「落ちた『穴』を覗き続けて」

連載「ニッポン スッポンポンNEO」

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心境の変化とは…(※イメージ)

心境の変化とは…(※イメージ)

 作家・北原みのり氏の週刊朝日連載「ニッポンスッポンポンNEO」。北原氏は、警察に逮捕されてから1年が経ち心境に変化があったという。

*  *  *
 去年の12月3日に警察に逮捕された時から、ようやく1年経った。この1年、私は、できるだけ「語らない」ように過ごしてきた。

 留置場に入った晩、弁護士の村木一郎先生が「ここで体験したことは、作家として、きっと役立つはずです」と仰った。まだ入ったばかりだったので、そんなこと考えられる状況ではなかった。ただ、私服を取り上げられ裸にさせられ、体の傷を一つ一つ職員の女性数人に囲まれ数えられ、「なんで、こんなに傷があるの~!? ひゃー!」と笑われたこととか、いつか私は書くことになるのかなぁ~と、ぼんやりと考えていた。でも、そういう細かいことを一つ一つ書いていったら、私の母や父、周りにいてくれる大切な人たちの方が傷ついてしまうかもしれない、と思った。というか、今これを書きながらも、とても迷っている。

 権力の酷さを告発するために書けることは、いくらでもあるように思う。でも私は自分の発言が、どのように誰を傷つけるのか、誰を刺激することになるのかを、物凄く気にするようになった。事件の内容について、私が逮捕された理由について、検察とのやりとりや、周りの人たちの反応、そして私が「わいせつ罪」を認めたことの理由。書くことは、たくさんあるだろう。でも、スラスラとは書けないのだった。

 書けない理由の一つは、時間だと思う。まだ、語れるだけの時間が経ってないのだ。つまりは渦中にいるような気分が、続いている。そしてもう一つの理由は、世界の色が、よくわからなくなってしまったのだ。


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