今世紀最後にして最大?(※イメージ)
今世紀最後にして最大?(※イメージ)

 9月28日。平日の午後だというのに、東京・丸の内にある商業施設JPタワーの会議室は熱気に包まれていた。

 持ち株会社の日本郵政、100%子会社のゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の3社が11月4日、東証1部市場に新規上場(IPO)する。その個人投資家向けの説明会に、321人が集まった。上場前に、個人投資家向けに説明会を行うのは異例の出来事だという。会場を見渡すと白髪交じりの頭が大半だ。

 新聞広告を見て来たという東京都在住の女性(76)は、声を弾ませながら言う。

「IPO株は一般の人には手が届かないものと思っていましたが、もしかしたら抽選で当たるかもしれないわね。今のところ、3社合わせて300万円ぐらいの予算で買う予定です」

「300株ずつ買う。国債を買う感覚で投資する」(70代後半・男性)

「退職金を寝かせておくのはもったいないから、ずっと株式投資している。(日本郵政グループは)国営企業みたいなものだから安心して投資ができる。損はさせないはず」(80歳・男性)

 会場から出てきた投資家に声をかけると皆、鼻息が荒い。それもそのはず。

 売り出し時の想定価格は、日本郵政が1株1350円、ゆうちょ銀行が1400円、かんぽ生命が2150円と設定されている。売買に必要な単元株は各100株。

 売り出し価格がこの金額で決まったとすると、3社合わせて49万円で取得できる計算だ。

「同業他社と比較すると、かなり割安」と言うのは、経済評論家の杉村富生氏。

「株価が割安かどうかを判断する指標のひとつ、『PBR』(株価純資産倍率)で比較してみますと、2016年3月期は日本郵政が0.40倍でした。一方、国内シェア4割のヤマトホールディングスのPBRは、10月9日の時点で1.80倍でした」

 倍率が1よりも低いほど割安と判断される。

 さらに、ゆうちょ銀行のPBRは0.45倍。これに対して、メガバンクの三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループはともに0.72倍。かんぽ生命の0.65倍に対して、生保大手の第一生命保険は0.71倍(10月9日時点)。大差はないとはいえ、いずれも1倍以下の割安株だ。

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