終のすみかは自分でつくる気概が必要?(※イメージ)
終のすみかは自分でつくる気概が必要?(※イメージ)

 元気なうちは決断できずに時は過ぎ、ふとした骨折で寝たきりになったり、認知症を患ったり。切迫した状況では子どもや親族の都合が優先され、自分の意思を挟む余地は少なくなる。

「住み替えは気力・体力のある75歳ぐらいまでに終えるのが理想」

 関係者は口をそろえる。

「住み替えの選択肢は既存施設だけではありません。高齢者同士が互いに支え合いながら暮らすグループリビングやシェアハウスなども、近年、注目を集めています」

 と話すのは、高齢者住宅仲介センターの満田将太さんだ。11月から千葉県山武市でグループリビングを始めるという人を紹介してくれた。

 川崎市在住の小澤健二郎さん(80)は、40年来の親友、田中義章さん(77)、坤江(ただえ)さん(77)夫妻が建てたシニア向けのアパート「むすびの家」に引っ越す予定だ。

 小澤さんに子どもはおらず、23年前に妻を亡くして以来、ひとり暮らし。むすびの家の構想が現実になると、小澤さん、田中さんどちらからともなく、「一緒に暮らそう」となった。

 そこには、小澤さんの亡き妻、静子さんの思いがあった。坤江さんは話す。

「静子さんが亡くなる前に、『夫のことは田中さんがいるから安心』と話されたんです。それがずっと忘れられなくて。ようやくその思いに報いられそうです」

 田中さん夫妻にも子どもがいない。やがてどちらかがおひとりさまになることを覚悟している。独り身でも高齢でも、楽しく暮らせる住まいをつくりたいという夫妻の夢が、むすびの家に結実した。

次のページ