冒頭で触れたベアにしても、「メディアで報道されているのは広告の出稿主である大手企業の話ばかりで、末端の中小企業までは波及していない」と山口氏は指摘する。

 実際、大手企業と中小企業では、すでに賃上げ額に開きがある。中小企業にベアの波が届かなければ、格差は広がる一方だ。

 一方、「多くの企業は相変わらず人件費を抑制している」と斎藤氏。現に、会社員の平均年収は23年前とほぼ変わらない水準にとどまる。2013年は413万6千円。90年の425万2千円と同レベルだ。

「増税から1年が経過し、統計上はその影響がなくなるため、15年度の実質賃金は1.1%のプラスに転じるでしょう。ただ、減少が始まる前の水準まで戻るのは容易ではなく、16年度の伸びは0.5%にとどまると見ている。しかも、その先にはさらなる増税が予定されている。政府は株価のことしか気にしていない。昨年の増税が失敗だったとはあまり思っていない様子ですが、家計は相当冷え込むでしょう」

 17年4月には、消費税を10%に引き上げると安倍政権は公約している。それは、まさに自爆ボタンのスイッチとなりそうだ。

週刊朝日 2015年4月17日号