当時わずか15歳だった少女Aが同級生を殺害し、遺体をバラバラにした佐世保高一殺害事件。本誌は動機の“核心”に迫るAの肉声の“記録”を入手した──。そこには、「より人間の方が(殺すことを想像すると)興奮する。楽しい」など事件の3日前に継母に伝えた少女Aの言葉があった。

 同日、Aとの会話を継母は精神科医に伝えたが、対応は肩すかしだったという。

「『そうでしょうね』と精神科医に当たり前のように言われ、今日は時間がないから書面にしてきてくれと、言われたのです」(継母)

 父親と継母はAの言動を書面にして翌々日の25日に精神科医とカウンセラーに見せ、「入院させたい」と訴えたが、医師らは「入院は難しい」と回答した。

 父親と継母は同日、児相に電話をしたが、時間外だから月曜日に電話するように言われた。そして翌日に事件が起こったのだ。

 さらに事件後、長崎県福祉保健部こども政策局が発表した資料によると、この精神科医が児相に通報の電話をしたのは6月10日──。

 通報を放置した児相の対応ばかりが問題になっているが、Aの父親と継母は事件後まで、精神科医が児相に通報した事実さえ、全く知らされていなかったというのだ。

 
「父親らは精神科医との連携不足を嘆いていた。事前にもっと知っていれば、対応できたのに、という無念の思いもあったようです」(父親の知人)

 精神科医としての守秘義務があるとはいえ、なぜ保護者にこうした事実を伝えなかったのか。

 本誌は精神科医を直撃したが、無言。病院事務長から以下の回答があった。

「すべての社からの取材を断っておりまして、なにもお答えできません」

 少女の精神鑑定の期限は12月24日。だが、鑑定が終わっても前途は多難だ。

「少年審判が開かれても、親権者がいなければ、壁にぶち当たってしまう。今後は被害者との損害賠償交渉などもある。父親の自殺後、継母は体調を崩し、長崎の病院に入院したりしていたが、祖母の死亡確認に立ち会ったり、Aの兄の相談にのったりと親代わりのようなことをしていた。だが、実家の両親から、A家と縁を切り、長崎を出るように説得されているので、今後どうなるかは全くわからない。審判までにきちんと後見人を立てなければ、少年審判を始めることも難しくなります」(地元司法関係者)

 Aは10月、佐世保署の霊安室で、自殺し遺体となった父親と十数分、対面し、涙をこぼし、すすり泣いていたという。五里霧中の中、真相はどこまで明らかになるのか。

(本誌・牧野めぐみ、上田耕司/今西憲之)

週刊朝日  2014年11月21日号より抜粋